2021年度の市政運営と予算の編成に関する要望書

八王子市長 石森孝志 殿

2021年度の市政運営と予算の編成に関する要望書
2020年11月16日
日本共産党八王子市議会議員団
市議会議員  鈴木勇次
同 青柳有希子
同  石井宏和
同  望月翔平
事務局  市川克宏

八王子市の発展と市民福祉の増進のため取り組まれている貴職に敬意を表します。
2020年は新型コロナ感染拡大のもと、5回にわたる補正予算で697億円を超えるコロナ対策関連予算を決定し、行政の力をコロナ対策に集中してきました。しかし本市においては、現在までに500名を超す多くの感染者が発生し、今後の感染拡大も一層懸念されます。来年度の予算編成においても、市民の生命と暮らしを守る市政運営を行い、施策の優先順位について十分な配慮をいただくとともに、各種基金も活用して感染拡大防止及び市民への支援を一層強化していただくことを切にお願いします。
私たち議員団は、この間コロナ感染防止対策会議を定期的に開き、感染拡大防止に必要と思われる課題や市民のくらしの実態把握に努め、これまで4回にわたり要望書を貴職に届け、実現のために努力してまいりました。いくつかの点で実行していただいたことに感謝申し上げます。この度の要望書は2021年度の市政運営と予算要望に関するものですが、今年度の補正予算で実施できるものは早期に取り上げていただくようお願い致します。

1、新型コロナ感染防止対策について
本市の感染者累計は現在500名余、死者も7名となっており都内でも感染者数の多い自治体として深刻な状況が続いています。感染拡大防止のため一層の努力が求められています。
①保健所が進めている行政検査、発熱外来センター・医療機関等で行う保険診療検査等が滞りなく進められるよう保健所の保健師増員等、体制の強化を含め感染拡大防止に向けて万全の措置を講ずること。インフルエンザ感染と重なる場合の対応を医師会の協力も得て万全を期すこと。
②感染拡大防止の措置として、積極的に感染状況を把握し感染者を早期に発見し、隔離・保護するためPCR検査を実施すること。都の支援制度を活用し、感染リスクの高い高齢者介護施設や障がい者施設等での検査を実施すること。東京都の制度から漏れた保育所、幼稚園、学童、学校等施設については、市がPCR検査、抗原検査を行い、感染拡大を防ぐこと。
③コロナ患者を受け入れる市内医療機関・医療従事者への支援を継続し拡充すること。エクモ等高額な医療機器・必要な医療機器購入の支援を行うこと。コロナ患者を受け入れていない医療機関にも財政援助を行うこと。
④国民健康保険税の値上げは行わず、値下げすること。18歳以下の子どもの均等割を軽減すること。

2、生活困窮家庭・福祉の課題について
コロナ禍による失業や倒産などで市民のくらしは一層困難な状況となっています。多くの生活困窮者が更に増えることが予想されます。
①ケースワーカーを増員し、生活保護申請への適切な対応を行うこと。住宅や住む場所を失った方々への相談などきめ細やかな支援を行うこと。
②フードバンク、子ども食堂への支援を強化すること。食材の保管場所の確保等援助を行うこと。
③市が行っている無料学習教室に一度登録した子どもは、希望すれば継続して利用できるようにすること。また対象を拡大すること。ケアが必要な子どもたちへの支援を若者相談センターとも連携し継続的に実施すること。
④就学援助制度を周知し、援助品目の拡大充実を図ること。
⑤学童保育所待機児童の解消のため学童保育所の施設整備を進めること。
⑥保育園待機児の入園措置は認可保育園で行い完全解消を達成すること。八王子の保育は認可保育園を基本とすること。市立保育園は存続し、拡充すること。
⑦保育士の不足解消及び、学童職員の安定雇用のため賃金など処遇の改善に努めること。
⑧介護施設事業所の倒産が介護保険制度開始後最大となっている。運営費補助など含め支援すること。また介護職員の処遇の改善を行うための支援を強化すること。
⑨特別養護老人ホームの整備計画をもち、増設すること。介護保険料の値上げは行わないこと。総合事業の利用を理由とした要介護者の介護外しは行わないこと。
⑩在宅高齢者おむつ事業の対象要件に「世帯全員が市民税非課税」を加えず、事業を継続すること。
⑪障がい者のための長沼通所センターは存続させ、日中活動系の事業所への家賃補助は継続すること。
⑫障がい児の移動支援を小学生から実施し、学童への送迎でも使えるようにすること。また受け入れる事業者を増やしていくこと。

3、市民・中小企業・農業支援、雇用と仕事おこしについて
①コロナ禍における子どもの生活実態調査を実施し、政策に生かすこと。その際には、学校を通じて回収し、回答率を上げること。
②補正予算で始めた各種支援制度では用意した枠に申し込みが達しなかったものが多い。要件の緩和など市民が利用しやすい制度設計とし、困っている市民に支援が確実に届くようにして継続的に支援を行うこと。
③市内の劇団など文化団体の存続と持続的な発展のために、学校等で公演の機会をつくるなど支援策を検討すること。
「密を避けるため複数回公演になったが、公演料は従前と変わらない」などの事例もあり、実情に見合った公演料が支払われるよう支援を行うこと。市の施設利用料値下げなど公演費用軽減のための支援を行うこと。
④消費税増税に加え、新型コロナ感染症による影響で個人・中小企業の経営難および倒産が相次いでおり、個人・中小企業の実態調査を行い事業継続のために必要な支援を実施すること。
⑤一斉休業後、給食の委託業者が従業員に対し一定期間給与の支払いを行わなかった事例があった。委託業者の雇用状況を把握すること。適切な雇用環境を確保するため公契約条例を制定すること。
⑥新規就農者への支援は就農時だけでなく継続して行い、農業後継者づくり・農業の振興につなげること。農地を持つ市民へ、生産緑地制度・農地バンク制度や中間管理機構の制度を周知し農地の保全を図ること。
⑦学校給食の地元産食材使用率向上に向けて参加する農業者・農福連携事業者を増やすためにも、保健給食課と農林課が連携して食材の輸送や納入、あっせん等の支援を行うこと。
⑧消費税増税および新型コロナ感染症の影響で建設労働者も収入の減少や仕事を失うなど苦しい状況であり、仕事の喚起を促すためにも経済効果の大きい住宅リフォーム助成制度を実施すること。

4、教育環境・教育条件整備について
①学校図書館司書について早期に全学校へ専任司書を配置すること。また司書の人数を直ちに増やし、当面は大規模校の配置日数を増加するなど対策をとること。
②新型コロナ感染症の影響で学校現場においても三密対策の実施が求められており、夏場でも体育館を活用し授業ができるよう早期に学校体育館へのエアコン設置を進めること。
③文科省は概算要求を出して少人数学級の実現を目指す方針を示しており、1日も早く少人数学級が実施されるよう必要な教職員の加配、財政措置を国や都に働きかけること。
④政府が進める教職員への『変形労働時間制』の導入は教員の長時間勤務を一層助長し過労死の原因となる。導入に反対し教職員の多忙化解消対策を進めること。
⑤学校給食費の値上げを行わず、無償化に向け負担軽減すること。また私会計を公会計にすること。
⑥新型コロナ感染症の影響で遅れている授業時間の確保や心身のケアをきめ細かく実施するため市独自の学力定着度調査(テスト)を中止し、支援員の加配やカリキュラムの精選など子どもたちの負担にならないよう配慮すること。
⑦感染症対策に必要な備品および消毒作業員の確保など学校現場の実情に応じて継続的に支援すること
⑧感染症対策及びきめ細やかな教育を実現するため学校の統廃合の計画は中止し、公共施設の複合化については住民の意見に即して慎重に行うこと。
⑨1人1台のパソコン配備によって通信費用など新たな負担が生じている。就学援助の対象に加えるなど低所得世帯等への支援を実施すること。
⑩教職員を対象に定期的なPCR検査を実施すること。
⑪夜間中学に関して
(ア)第五中学校は多摩地域で唯一開校している夜間中学であり、近隣市からも通学者がいる。第五中学校の案内を積極的に広く行うこと。また募集チラシも多言語で作成し、市のホームページ等に掲載すること。
(イ)日本語指導が必要な生徒のために日本語学級を開設すること。
(ウ)母国で義務教育を修了している場合でも期間が9年未満であれば日本の高校に進学できないなど弊害がある。こうした方々も第五中学校へ入学できるようにすること。
(エ)年齢制限を設けずに就学援助を行うこと。

5、学生・若者支援について
①学生の実態についてあらゆるツールを活用し、継続的に調査すること。市独自の学生特別給付金について要件を緩和・簡略化し、10月末までであった期限も再度延長して実施すること。
②教科書代や通学費、オンライン授業実施による新たな費用負担が発生している。こうした費用についても対象となる学生を広げて支援を行うこと。
③新たに開設された若者相談センターについて大学等と連携して周知を徹底し、学生・若者が孤立しないよう支援を強化すること。また相談もLINE等の活用を図ること。

6、まちづくり、都市基盤整備、災害復旧について
①さまざまな開発や都市基盤整備の事業は、市民意見を取りいれ、市民の要望に沿うよう努めること。SDGsの精神に則して行い、無謀な開発は行わないこと。
②長期ビジョンの作成は、市民意見の集約に時間をかけ、市民の合意のもとに進めること。
③川口の区画整理では関係資料に対して「事業に支障をきたすので非開示とする」などという姿勢をあらためること。移植など天合峰の自然保存の措置が適正に行われているか点検すること。
④高尾駅南北自由通路建設は工事着工まで一定の時間が必要な状況だが、駅のバリアフリー化を早期に進めること。
⑤医療刑務所跡地に建設予定の憩いライブラリ及び歴史・郷土ミュージアムの管理運営は市の直営方式とすること。
⑥明神町旭町再開発の計画づくりについては適宜説明をすること。保健所跡地の都施設での活用に対する権利保障を東京都と交渉すること。
⑦インター北地区の元都有地にイオンが出店しない場合の対応について検討を進めること。
⑧弐分方町の都有地については地域住民の要望に沿うよう努めること。
⑨北西部幹線道路の掘割の構造は、災害に弱いばかりでなく地域を分断するものであり計画の変更・見直しを行うこと。
⑩山間地への建設残土の持ち込みが今後多発化する可能性がある。環境破壊の残土の持ち込みを許さないこと。
⑪八王子労政会館は、多様な市民活動に欠かせない施設である。市への移管を含め東京都と協議し、存続させること。労働相談情報センターの機能を残すこと。
⑫2019年度の台風災害で復旧が遅れている場所について、住民要望を整理し市の支援を行うこと。

7、公務・公共施設・公共料金
①昨年度、過労死ラインを超える超過勤務を続けた市職員が激増しており、過重な働き方を是正すること。災害対策や市民サービスの確保・充実を図る観点からも市の職員は正規職員を基本とし、その割合を高めるよう努力すること。
②消費税増税と新型コロナ感染症による経済活動の悪化を考慮し、公共施設の利用料・使用料、下水道料などの値上げを行わないこと。収入が激減した世帯に対し、減免や支払い猶予の制度があることの周知を強化すること。住民の福祉向上のための市独自の補助金は維持し、減額しないこと。

8、地球温暖化防止・再生可能エネルギー普及について
①本市の温室効果ガス削減目標を引き上げ、その実現のために再生可能エネルギー活用を促進すること。
②太陽光発電など、公共施設での再生可能エネルギー導入の遅れを取り戻し、既存施設等条件の合う所全てで導入すること。蓄電池を含めた補助を拡大し、民間での再生可能エネルギー利用の促進を図ること。

9、平和行政について
①核兵器の廃絶を求めて
平和首長会議に加盟した本市として、国に対し核兵器禁止条約を批准するよう求めること。
②横田基地被害への対応について
(ア)横田基地周辺で米軍機の部品落下事故が相次いでいる。オスプレイのサーチライトドームはどこで落ちたかわからないままで、本市で事故を起こした可能性もある。各種の事故原因の究明とその間の飛行停止、再発防止を米軍に求めること。
(イ)オスプレイについては横田基地配備時に基地外では極力行わないと言明したヘリモードや転換モードでの飛行が横行していることにも抗議し、配備撤回を求めること。
(ウ)日本の航空法を遵守し、特に危険なパラシュート降下訓練、低空飛行、夜間飛行など行わないよう求めること。騒音測定を強化し、抜本的な騒音の軽減を米軍に求めること。