2016年度八王子市予算編成と市政運営に関する重点要望書

八王子市長 石森孝志 殿

2016年度八王子市予算編成と市政運営に関する重点要望書
2015年11月11日
日本共産党八王子市議会議員団
代  表  山越 拓児
鈴木 勇次
青柳有希子
市川 克宏
石井 宏和

 貴職の市政運営のご努力に敬意を表します。
 8月10日付で提出いたしました緊急要望について、小中学校の特別教室への空調機整備については早速補正予算を計上され、今後も計画を前倒しして整備を進める方針が示されたことを評価いたします。子ども医療費助成制度の拡充についても、アクションプランに盛り込まれたことを喜んでおります。
 さて、安倍政権が異常な円安と物価上昇、大企業減税と消費税増税、雇用や農業の規制緩和などを進める中、大企業の利益は記録的な増加を見せても労働者の所得や雇用は改善せず、消費の拡大も鈍いままです。本市の平成26年度決算で市税収入増となったことなどは好転の兆しのように見えますが、楽観することはできません。昨年の消費税増税のあとGDPはマイナス成長を続け、今年4~6月期にもマイナスに転落しているからです。本市が地方自治体として市民の暮らしを守るために最善を尽くすことが求められています。
 本市は今年度より中核市へ移行し、移譲された権限を生かして独自基準を盛り込んだ条例の整備も行われてきました。市民が中核市移行のメリットを十分に感じられるよう、期待をするところです。地方自治の本旨に立って、住民の命と健康、平和を守り、福祉を増進する自治体の役割を発揮されるよう、いっそうのご努力をお願いいたします。
 この間国会では、国民の反対の声が大きく広がる中で安保関連法案の採決が強行されました。法案に反対した世論と運動は、空前の規模で引き続き強行された法の廃止をめざして続いています。日本国憲法を守り発展させるために、貴職が力を尽くされることを心から期待します。
 新年度の予算編成にあたり特に重要と考える点を下記の通り重点要望としてまとめました。予算編成並びに今後の市政運営に反映していただけますよう、よろしくお願いいたします。


 

1、昨年4月からの消費税引き上げで家計は悲鳴をあげています。また、市は、第8次行財政改革推進プランで「受益者負担の適正化」を掲げ、テニスコート使用料の値上げなどを行ってきました。消費税増税や受益者負担を理由として給食費、公共施設使用料など公共料金の値上げを行わないこと。
 安倍政権は昨年末に消費税10%への増税を2017年4月に先送りしたものの、今度は景気のいかんにかかわらず実施するとしています。内閣府の「経済財政白書」は、消費税増税による消費の後退に加え、名目賃金が伸び悩む一方、消費者物価が上昇したことで雇用者所得がマイナスになり、消費が抑えられていることを、回復の遅れの原因だと指摘しています。市民生活に重大な悪影響をもたらす2017年4月からの消費税10%への再増税の中止を国に求めること。
2、2014年度に国民健康保険税が値上げされ、市民から「負担が重くなった」「払いきれない」との声が寄せられています。2016年度は市が設定した2年毎の見直し年度となりますが、年金生活者や非正規雇用、無職者など低所得者への影響が大きく、国保税の値上げは行わないこと。国に対して国庫負担の増額、都に対して補助金の増額を求めるとともに必要な一般会計の繰り入れを確保すること。
 国民健康保険は社会保障制度であることから、被保険者の医療を受ける権利を保障するために、資格証・短期証の発行をやめること。徴収努力や納税相談で把握した市民生活の実態を考慮して丁寧に対応すること。
3、非正規雇用の拡大による低所得者層の拡大が社会問題になっている中で、政府は労働者派遣法の改悪を強行し、さらなる雇用の不安定化を招いています。厚生労働省が一定の規制に乗り出したものの、ブラック企業、ブラックバイトが横行し、青年を追いつめています。八王子若者サポートステーションが、若者の就労・自立支援に効果を上げてきました。緊急雇用創出事業臨時特例補助金を活用した若年無業者就労促進事業によって、ひきこもりだった青年も合宿や清掃活動などを通じて社会へ足を踏み出す成果も生まれています。引き続き若者の就労自立支援のための施策を行うこと。
 八王子労働相談情報センターは、労働者の貴重な相談窓口であり、労政会館は労働者をはじめ広範な市民の会議やスポーツに利用されるかけがいのない施設です。双方とも存続となるよう東京都に働きかけること。
4、「第6期介護保険事業計画」で地域密着型小規模特別養護老人ホーム3カ所の整備計画を掲げたものの、今年度当初の事業者募集では応募がありませんでした。現在、他のサービス併設も可能として再募集していますが、事業者が積極的に応募するよう東京都補助制度の活用、公有地の活用を図ること。「介護予防・日常生活支援総合事業」で、介護の質が低下することのないようにしつつ、利用者のサービス選択の意思を尊重し、現行サービスを後退させないよう、介護事業所に現行相当の介護報酬単価を保障すること。介護保険料・利用料の低所得者減免制度を確立すること。
5、今年9月の台風18号に伴い土砂災害警戒区域等の住民に対し避難勧告を発令しました。災害時に早く正確な情報伝達は欠かせません。今年度は地域防災行政無線基地局を市役所本庁舎に増設し、電波到達エリアの拡大を図ったほか、防災行政無線設備をデジタル式への更新工事に着手しました。また、臨時災害FM放送局の開設に必要な設備も導入、JCOM八王子と防災行政無線の再放送に関する防災協定を締結し、11月から専用端末を家庭に設置することで防災行政無線による放送を屋内で聞くことができるようになりました。すべての市民を対象に、屋内で正確な情報提供をはかるために有線受信機やラジオなど各家庭に防災情報をうけとることができるようにすること。
6、どの世帯でも安心して子育てができるよう子育て支援に取り組むこと。保育園の待機児解消のために、引き続き認可保育園を増設すること。保育士の待遇改善を進め、保育士確保に努めること。学童保育所における待機児童の解消、対象年齢引き上げによる高学年受け入れのできる施設整備を行うこと。保育料算定にあたり、旧年少扶養控除再算定や多子負担軽減などを継続するとともに、保育料、学童保育料の値上げは行わないこと。
7、子どもの貧困対策法の制定をふまえ、生活保護世帯やひとり親世帯だけでなく就学援助受給世帯にも無料塾の対象と回数を広げるなど充実すること。市の奨学金について対象者数を増やすこと。国による生活保護基準の引き下げを就学援助に反映させることなく、対象者を広げる所得基準の引き上げを行うこと。中学校を不登校で卒業した人も夜間中学の入学対象者とされたことを受け、多摩地区唯一である第五中学校の夜間学級の取り組みを充実させること。夜間中学の就学援助の年齢制限を撤廃すること。
8、「八王子ビジョン2022アクションプラン」において親子方式による中学校給食を掲げていますが、新年度に具体化されるのは横川中など3校のみです。温かい中学校給食を全校で実施するための計画をつくって進めること。
 小中学校校舎の老朽化により雨漏りがする、給配水管のサビがひどくて水が飲めないといった状況が報告されており、緊急の対策を行うこと。
9、学校司書が現在80校を対象に週1回派遣されるまでになり、学校司書による図書館活動が行われるようになった学校では、「図書館へ行く児童が増えた」「児童・生徒が本を借りていく冊数が増えた」とどこでも歓迎されています。早期に残る28校への配置を進めること。また、週1回の巡回では時間が足りないとの声が寄せられており、派遣回数を増やすなど充実を図り、専任化をめざすこと。
10、住宅耐震化促進事業は予測される地震被害の減災が目的であり、目標達成に向けて、市民が使いやすい制度へ改善を図り、予算枠を拡充すること。
 居住環境整備助成事業は、市民に喜ばれるとともに大きな経済波及効果があり経済活性化にも役立っています。市民がより使いやすいものとするために、対象工事を広げるなど拡充を行うこと。
 公契約条例について、「調査検討委員会」の検討結果を踏まえ、市は入札契約制度の改善で対応することとし、条例制定は当面行わないとしています。しかし、公共工事であれ業務委託であれ、労働者の賃金とくに下請け・孫請けへの反映は十分ではありません。2009年に野田市で制定されて以来、東京都内でも多摩市、渋谷区、国分寺市、千代田区、世田谷区に広がり、近隣では相模原市でも制定されています。多摩市が行った事業者に対するアンケート結果によると、70%の事業者が改善されたと肯定的な回答を寄せ、60%の事業者が地域経済や地域社会の活性化につながっていると回答を寄せています。本市でも早期に公契約条例制定の決断を行うこと。
11、ごみ減量を着実に実現するには、可燃ごみの4割を占める生ごみが課題となっています。ダンボールコンポストによる堆肥化は、技術的に課題が大きいとの声も寄せられており、抗酸化バケツ方式など複数の方式を導入すること。あわせて生ごみ堆肥を受け入れ活用できるよう、農業者との連携を強化すること。新館清掃工場の建設に当たっては、ごみ減量を進める中で安全で適正な規模にすること。
12、川口物流拠点事業について、当初の「流通・研究業務地」から「産業・業務複合地」(第2次都市計画マスタープラン)と位置づけを変えたことは、物流・流通だけでは事業の成立が危ぶまれることを示しています。また、環境アセスメント手続き上、土地活用の範囲や内容、造成計画が示されておらず、環境への負荷がどうなるか不明であり、正確な環境影響評価を行うことができません。予定地の里山「天合峰」の自然は、東京都においても貴重なものであり、山を崩し貴重な自然を壊す開発計画は中止すること。
 北西部幹線道路は、市が東京都による施行を求め始めたように、建設費が市の財政に過大な影響を与えることは明らかです。都施行が決まるまでは市が引き続き事業主体として整備を進めようとしていますが、なし崩し的なやり方は許されません。現在の整備計画では、盛り土により住宅地を分断し、生活道路の接続や排水など地域に大きな影響を与えます。市は地権者への接触、境界画定作業を行っていますが、地域への影響を全住民対象に知らせる説明会を行っていません。建設費負担の大きさ、地域や住民への深刻な影響、水害や事故を起こす構造上の問題等のある北西部幹線道路計画は中止すること。
13、マイナンバーによって、現在各機関で管理されている年金、税金、住民票などの個人情報が容易にひとつに結び付けられ、個人情報を簡単に引き出せるマイナンバーを、他人に見られないようにしたり紛失しないようにしたりする手間が大変です。マイナンバー制度のもつ個人情報管理のリスクを市民によく知らせ、国に対し凍結・中止を求めること。すでに全国各地で発生しているマイナンバー絡みの詐欺事件が起きないよう周知を図ること。
 マイナンバー制度の運用にあたっては、インターネットとの物理的切断をはじめシステムの安全対策の強化、特定個人情報保護評価書の第三者チェック体制の確立、個人情報処理業務の再委託の原則禁止、国等との個人情報のネットワーク上のやり取りの定期的報告など、監視と検証を強めること。
14、「人財育成プラン」では、「地方分権の進展や公務員制度改革などの環境変化とともに、団塊の世代の大量退職による年齢構成の変化や非正規職員の雇用割合増加などによる任用形態などの対応など新たな課題に直面して」いると指摘しています。決算審査の意見表明で指摘したように、本市の職員の過重な残業の実態は改善されるどころか深刻化しています。法令を順守し、必要な体制整備を行うこと。
15、福島第一原発事故は収束したとは言えず、事故原因の究明もあいまいなままです。にもかかわらず、政府は避難計画も定まらない中、原発の再稼働を進めています。原発がひとたび事故を起こせば、他の事故とは比べ物にならない深刻な被害を起こすことは明らかであり、国民の過半数は原発再稼働に反対しています。地震国・日本において原発の安全性の保証はできません。原発からの撤退を求める立場から、原発再稼働の中止を国に求めること。
 原発に頼らない再生可能エネルギーを市内でも着実に増やしていくことが重要です。「再生可能エネルギー導入方針」に基づいて、公共施設への太陽光パネルの設置を着実に実行すること。その際、施設内で電力を使えるようにすること。また、毎年市民から好評であり、地域経済にも好循環をもたらす再生可能エネルギー利用機器設置補助制度について予算増額など充実させること。
 東日本大震災では、今もなお23万人が避難生活を強いられ、被災地では、被災者支援の打ち切り方針や、被災自治体への財政負担の導入が検討されるなど、被災者に厳しい仕打ちが進められようとしています。八王子市内の被災者に寄り添いニーズに合った支援を続けるとともに、被災地への息の長い復興支援を継続すること。
16、安倍政権と与党は、憲法違反の安保法制を国民多数の反対の声に背いて強行採決しました。貴職は、憲法を尊重・擁護し、立憲主義・民主主義・平和主義を貫く立場から、安保法制=戦争法の廃止を国に求めること。
 横田基地での訓練が激しさを増し、米軍機の騒音被害もこれまでより広範な地域で報告され、オスプレイの飛来も急増しています。夜間・低空飛行、パラシュート降下訓練など危険な訓練に抗議するとともに、常時、詳細な航空機騒音測定を行って、市民にその実態を公開すること。
 侵攻特殊作戦用のCV22オスプレイを横田基地に配備する計画は、横田基地を侵略戦争の訓練・出撃拠点基地とするものであり、本市を含む広範な地域の住民を危険にさらすものです。市民の命と環境を守る立場から配備計画に反対すること。

以上