2017年度八王子市予算編成と市政運営に関する重点要望書

八王子市長 石森孝志 殿

2017年度八王子市予算編成と市政運営に関する重点要望書
2016年11月16日
日本共産党八王子市議会議員団
代  表  山越 拓児
鈴木 勇次
青柳有希子
市川 克宏
石井 宏和

 貴職の市政運営のご努力に敬意を表します。
 小中学校の特別教室への空調機整備、小中学生医療費助成制度の所得制限撤廃、地域密着型小規模特養ホーム整備支援、就学援助・入学準備金の3月支給など、私どもの要望・提案に真摯に対応していただいていることに感謝申し上げます。
 さて、本市の2015年度決算で市税収入が前年度に続き微増となりましたが、楽観することはできません。直近の家計調査報告では、消費支出の落ち込みが長期にわたっています。安倍政権は予定していた消費税の10%への引き上げを再度延期しましたが、市民の生活実態を見れば、今消費を立て直す対策が不可欠なのは明白です。本市が市民の暮らしを支え、貧困と格差の是正、中小企業支援などきめ細かい施策に取り組まれることを期待します。
 平成29年度予算編成方針は、「名実ともに多摩のリーディングシティにふさわしい都市として成長すべく、中核市の権限を最大限活用し、未来につながる魅力あふれる八王子の創造に向けたスタートとなる予算を編成する」とうたっています。本市は来年市制100周年という大きな節目を迎えますが、戦争の惨禍を繰り返さないという決意に立った日本国憲法に定められた地方自治の本旨に基づき、住民の命と健康、平和を守り、福祉を増進することこそ自治体の役割だという立場で市政を運営していただくことをお願いいたします。
 そこで、市民要望をふまえ、新年度の予算編成にあたり特に重要と考える点を下記の通り重点要望としてまとめました。予算編成並びに今後の市政運営に反映していただけますよう、よろしくお願いいたします。

1、消費税引き上げがもたらした国民生活への悪影響は明白であり、再延期された消費税率引き上げは実行することなく中止を国に求めること。市民の暮らしの実態をふまえ、消費税増税や受益者負担を理由とした公共施設使用料値上げ、学校給食費の値上げを行わないこと。また、現行の保育料・学童保育料の設定を守り、引き上げを行わないこと。
2、2018年度から、いわゆる国保の都道府県単位化が始まり、2年ごとの本市国保税見直し時期と重なる。この間国保税は、2014年度11.2%引き上げで13億8000万円、2016年度9.5%引き上げで11億5700万円の負担増(当初予算ベース)となった。国保税の値上げは、低所得者ほど値上げ率が大きくなり、市民生活を圧迫している。
 国保の都道府県単位化で、市町村は国保の事業運営主体として都道府県が示す「標準保険料率」と市町村ごとに決められる「納付金」に基づき保険料を決めて徴収することになる。国は一般会計からの繰り入れを解消させようとしており、その通りに対応すれば急激な国保税の引き上げとなり、無職・年金生活者、低所得者の多い国保加入者の生活は破綻してしまう。
 国に対して国庫負担の増額、都に対して補助金の増額を求めるとともに、必要な一般会計からの繰入を確保すること。また、加入者の医療を受ける権利を保障し、国保税の滞納処分に当たっては、納税相談等で把握した市民生活の実態をふまえた対応をすること。生活困窮による国保税の申請減免や一部負担金減免について、使いやすく実効性のある制度を構築すること
3、 市は、労働法セミナーの開催や中小企業向けメンタルヘルス対策支援、合同就職面接会等、中小企業支援と雇用対策を行ってきたが、これらの施策を継続・充実させること。東京都労働相談情報センター八王子事務所は労働者の貴重な相談窓口であり、労政会館は労働者をはじめ広範な市民の会合やスポーツに利用されている。市は昨年2月17日、都に対して、東京都労働相談情報センター八王子事務所の機能充実と労政会館の検討時に事前に情報提供と市との協議の依頼を要望しているが、具体的な動きは見えない。都の計画では5年後に統廃合とされており、引き続き八王子市として双方の存続を東京都に働きかけること。
 青年の就労や自立支援で着実な成果を上げてきた八王子若者サポートステーションとの連携を深め、職場体験事業所を増やすなど施策の充実を図ること。
4、来年度は、第6期介護保険事業計画の最終年度となることから、地域密着型小規模特養ホームをはじめとした未達成の介護基盤整備について目標を達成するために全力を尽くすこと。要支援者に対する介護予防・日常生活支援総合事業は、緩和された基準によるサービス提供の受け皿となる事業者がほとんどないなど、破綻が明白であり、国に対し移行中止を求めること。高齢者あんしん相談センターの増設・人員増など機能の拡充を進めること。介護人材の養成・確保について、これまでの取組の成果をふまえ、資格取得と就労支援を一体に公的な支援策を講じること。介護従事者の待遇改善に取り組み、宿舎の借上げ支援等を具体化すること。地域の支え合い・ボランティア体制の充実は、あくまで高齢者福祉の充実のために行い、安易に新総合事業の受け皿としないこと。
5、深刻化する待機児童問題がクローズアップされ、都知事選でも対策が競われ、小池都知事も補正予算を計上して対策を講じている。本市において今年4月の待機児童総数は309人、いわゆる隠れ待機児童数は170人となっており、新年度に向けて待機児解消は待ったなしの課題である。一方で、本市内でも認可保育園の建設をめぐって周辺住民から反対され計画が頓挫する例が生まれている。待機児ゼロを実現するため確実に認可保育園を増設するとともに、家庭福祉員や小規模保育事業についてはニーズを踏まえ安心・安全に保育サービスが提供されるようにすること。公立保育園のあり方検討会において、引き続き公立保育園の必要性を確認し、必要な保育士人材を確保すること。民間も含めた保育士の待遇改善を進めこと。発達障害児対応などきめ細かな民間保育園の支援策に取り組むこと。学童保育所における待機児童の解消、対象年齢引き上げによる高学年受け入れのできる施設整備を行うこと。児童福祉法改正に伴い児童相談所設置に向け、児童福祉司や児童心理司など専門資格者の確保など準備を着実に進めること。
6、障害者(児)の移動支援事業について、月ごとの上限時間(30時間)や年齢制限(15歳以上)の条件を改善し、当事者と家族が使いやすいものにすること。障害児の通学通所について一定の条件で利用できるようになったことは前進だが、まだ使いづらいとの声が寄せられており、さらなる拡充をめざすこと。また、支援事業の担い手を増やすためにも、知的障害者のガイドヘルパー研修を市として行うとともに、民間主催の講座に補助を行い受講者の負担軽減を図ること。
 障害者の作業所では、病気などによって利用が減れば施設の収入が減ることになり、収入が安定しない。障害者の居場所・活動場所としての作業所が安定して運営できるよう、新規以外のものについても家賃補助制度を継続・拡充すること。
7、6人に1人と言われる深刻な子どもの貧困に対して、市も子ども育成計画に施策の柱の一つとして位置づけて取り組みを進めている。そこで就学援助について、対象者を広げる所得基準の引き上げを行うこと。国による生活保護基準の引き下げを連動させないこと。また、就学援助の対象費目をクラブ活動などに拡充し、修学旅行などについて充実すること。国が入学準備金の単価を引き上げる方針とされていることから、本市の就学援助においても反映すること。生活困窮者自立支援法に基づく無料塾・学習支援の対象者を拡大するとともに、市民の自主的な取り組みである「子ども食堂」や「フードバンク」と連携した取り組みを行うこと。夜間中学校生徒における就学援助の年齢制限をなくし、経済状況に応じて支給ができるようにすること。
8、横川中学校など新たに親子方式による中学校給食がスタートした3校では、喫食率が平均8割前後に達し、栄養バランスが整った食事の確保が保障され、生徒や保護者、教員からも大歓迎されており、デリバリーランチと比較してその優位性は明白である。「小中学校間の親子方式の拡大による中学校給食の充実」という市長の公約に照らし、親子方式による温かい中学校給食の全校実施に向けた調査をすみやかに行い、実施計画をつくって着実に実行に移すこと。
 近年小中学校から400項目以上の学校営繕要望が寄せられている。どの問題も衛生、安全、防災の観点から切実なものであり、トイレ、体育館、プールなど学校施設の営繕工事ができるよう十分な予算額を確保すること。
9、この間、北野市民センター、由井市民センターみなみ野分館地区図書室が中央図書館分室とされ、いずれも利用者、貸出数など飛躍的に増加した。ビジョン2022及び第3次読書のまち八王子推進計画では、市民センター地区図書室の中央図書館分室化を掲げており、具体化を進めること。医療刑務所跡地活用では、「サードプレイス」といった概念や「憩いのライブラリー」というコンセプトが掲げられているが、市民が世代の区別なく何度でも足を運びたくなる施設の代表として図書館を位置づけ、具体化するなど、新しい図書館建設に向けた検討を始めること。
10、学校司書が全小中学校に派遣されるとともに、学校図書館サポートセンター指導員の増員、図書館側の学校図書館支援員が増員されるなど体制が強化されてきた。学校現場から喜ばれ、子どもたちの学校図書館利用と読書数の増加につながっている。さらなる体制の充実を進め、学校司書の増員で派遣回数を増やし専任化をめざすこと。
11、居住環境整備助成事業は事実上の住宅リフォーム助成制度であり、経済効果は高く、市民からも建設関係の地元事業者にも、大変喜ばれています。商店街の活性化のためにも、中心市街地空き店舗改修補助事業を発展させて商店リフォーム助成事業を立ち上げ、個店の魅力を向上させる取り組みを支援すること。
  契約の適正化、品質の確保を図ることと一体に、工事・業務委託を問わず、働く者の賃金・待遇を改善することが求められている。インフレスライド条項が適用されて単価の引き上げによる工事契約の変更が行われる案件において、それに伴い現場で働くすべての者の賃金に反映されているか調査し、適切な対応を図ること。他の自治体で成果をあげている公契約条例制定に向けて取り組みを始めること。
  今年4月に第3次八王子市農業振興計画が策定されたが、さらに都市農業振興基本法に基づいて現在、東京都都市農業振興基本計画が策定作業中である。これらをふまえ、東京随一の都市農業自治体として農業振興に取り組みを強化すること。生産緑地指定要綱を見直し、生産緑地の追加指定を可能にすること。
12、川口土地区画整理事業(流通拠点整備事業)は、補助金の形で多額の市税が投入される事業でありながら、総事業費などが市民に全く説明されていないことは重大であり、土地区画整理準備組合に対し直ちに総事業費を示すよう指導すること。また、市の支出計画についても明らかにすること。
 環境影響評価手続きを担当する区画整理課が、説明会において市民意見を切り捨てる強行的な進め方をしたことを猛省し改めること。準備書に示された法面の円弧滑り計算で示されたデータ等に初歩的な間違いもあり十分な精査検討がされていない。また、計画地北側部分の15か所に及ぶ土砂防災工事などは環境への重大な影響があるにも関わらず評価も行っていない。随所に問題点のある環境影響評価準備書に対し、市として十分な検討を行い、客観的評価に耐えうる意見を出すこと。
 北西部幹線道路(都計道3・3・74号線)について私たちは、「地域町会の分断、構造上の危険、広域産業道路であり市整備になじまない」ことを指摘してきた。3つの問題を解決するためには現状計画を根本的に見直すこと。
 本市の基本構想・基本計画は、市街化調整区域の開発を抑制することを原則としている。にもかかわらず、民間事業の川町スポーツパーク計画地について、市は特別土地利用が可能な地区として認定した。現地の状況について、市民が確認していた絶滅危惧種であるオオタカなど貴重種の調査をしていないことが明らかになった。そこで正確な調査と再度の判断を行うこと。仮に特別土地利用が可能だとしても、地域住民の生活環境や安全に対する十分な配慮が必要であり、川町スポーツパーク計画の土地利用は、条例に基づく規制基準の範囲を大きく超えており、今後、事業者の適格性、緑地保全、住環境への配慮、防災上の視点などから許認可について慎重に判断すること。
13、市職員の残業時間の多い職場の実態をつかみ、必要な増員を図ること。また、特定の職員に業務が集中することのないよう、労働時間に関する規制をしっかり守って、職員が健康に働き、十分な市民サービスが提供できる職員体制の整備と労働条件の改善を進めること。市民部事務所など地域サービスのあり方について内部検討を始めるとのことだが、高齢化・人口減少区域の切り捨てにならないようにすること。地域総合事務所や南大沢事務所で取り扱い業務を拡充してきたが、関係職員が常駐する福祉事務所の複数設置に向けた検討を始めること
14、先の鹿児島県知事選、新潟県知事選の結果や、各種の世論調査(「日経」2月29日付、「朝日」10月18日付など)にも現れているように、過半数の国民が原発再稼働に反対している。福島第一原発事故は、溶け落ちた核燃料の回収もままならず、汚染水の流出も続き、収束とは言えない状況である。本市で避難生活を続けている東日本大震災被災者の方たちに寄り添い、これまで同様に各種の支援を続け、いわき市をはじめ被災地への復興支援を続けること。
 地球温暖化防止への新たな国際的な枠組みであるパリ協定が11月4日に発効した。本市は、地球温暖化防止対策として重要な施策であるとの立場から「再生可能エネルギー導入方針」を定め、率先して市施設への導入を進めていくこととしており、その実施状況を明らかにしつつ、さらなる推進を図ること。また、「再生可能エネルギー利用機器設置費補助」制度について、予算の増額をはかること。
15、米軍横田基地に来年から特殊部隊のCV22オスプレイが配備される計画が進行しているが、オスプレイは昨年5月17日にハワイでMV22が墜落、乗組員2人が死亡するなど幾度となく墜落事故を起こしている欠陥機であり、敵陣深く侵入して特殊作戦を行う軍事目的から見ても横田基地配備は許されない。米軍は夜間飛行や低空飛行訓練を行うとしており、これまでの飛来でも市民の苦情と不安の声が上がっている。住民の命と暮らしを守る立場から、周辺市町村とも力を合わせてオスプレイ配備に反対すること。
 横田基地を発着する軍用機の騒音は激しさを増しており、夜間や早朝にたて続けに騒音が集中する事態もたびたび起き、旋回、パラシュート降下訓練など危険な訓練も行われている。夜間飛行、低空飛行、危険な訓練、異常な騒音にその都度抗議すること。航空機騒音を常時測定し、詳細な測定結果を速やかに市民に公表すること。