2018年度八王子市予算編成と市政運営に関する重点要望書

八王子市長 石森孝志 殿

2018年度八王子市予算編成と市政運営に関する重点要望書
2017年11月21日
日本共産党八王子市議会議員団
代 表 鈴木 勇次   
山越 拓児   
青柳有希子   
市川 克宏   
石井 宏和

貴職の市政運営のご努力に敬意を表します。
 私どもが要望した保育園待機児解消へ認可保育園の新増設や、就学援助・入学準備金の単価引き上げ、生活困窮家庭への無料塾拡大などがこの間具体化されていることについて感謝申し上げます。
 今年本市は、市制100周年を迎え、都市緑化はちおうじフェアの開催をはじめとした各種の記念事業が行われてきました。残されたものも含め、これらの取り組みが成果を挙げ、市民のみなさんにとっても実りあるものとなることを期待しています。
 安倍政権は、総選挙の結果を受けて憲法改正発議に向けた議論を加速するとしていますが、憲法9条に自衛隊を書き込むことは海外での武力行使の歯止めをなくすことです。来年度予算編成に向けて、診療報酬と介護報酬の引き下げや生活保護の医療扶助の改悪などで社会保障費を全世代にわたって削減する方向であり、「医療崩壊」「介護難民」を生んだと批判された小泉政権を上回る削減を続けています。
 こうした政治状況の下、貴職が日本国憲法施行70周年をふまえ、政府の平和と社会保障への攻撃に対して、住民の命と健康、平和を守り、福祉を増進する市政運営をされることを切に願うものです。また、小池都知事が多摩格差の解消を公約に掲げ、都議会でも努力を表明していることから、積極的に問題提起して多摩地域の住民施策の向上に努めていただきたいと思います。
 私どもに寄せられている市民要望もふまえ、新年度の予算編成にあたり特に重要と考える点を下記の通り重点要望としてまとめました。予算編成とともに今後の市政運営に反映していただけますよう、よろしくお願いいたします。

【市民生活と公共料金等】
1、消費税8%への引き上げは、個人消費を冷え込ませ市民生活に深刻な影響をもたらしている。安倍政権は、「少子化対策の充実」を掲げ、その財源の一部を消費税増税で充てようとしているが、そもそも消費税増税は、子育て世代や社会保障を必要とする世帯に重い負担を強いるものである。2019年10月に予定されている消費税10%増税は、中止を求めること。
 第8次行財政改革推進計画では受益者負担の適正化が強調され、今後基本方針に沿って施設使用料、手数料等の見直しが行われる予定である。市民の暮らしを守り、文化、スポーツ、生涯学習を積極的に推進するために、公共施設使用料、下水道使用料、保育料・学童保育料などの値上げを行わないこと。

【国民健康保険】
2、新年度実施予定の国民健康保険の都道府県単位化は、市区町村の法定外繰り入れ解消を迫り、これを前提にした東京都による標準保険料の第2回試算の結果、本市の保険税は被保険者1人当たり13万5千円とされ、現行の法定外繰り入れをした場合よりも約1.4倍の負担増となるものだった。これまで、本市では2014年に11.2%、2016年に9.5%と引き上げが行われ、被保険者の支払いは限界にきている。保険税率の決定に当たっては、保険税の値上げとならないよう、一般財源による法定外繰り入れを確保すること。東京都に対し、市区町村国保への財政支援を要請し、国に対して国庫負担の増額を引き続き求めること。保険税の滞納者に対しては、生活実態に即した納税相談等を行い、被保険者の生活の安定を図ること。また、多子世帯やひとり親家庭への均等割軽減制度を創設すること。

【雇用・産業交流拠点】
3、東京都労働相談情報センター八王子事務所は、労働者の貴重な相談窓口であり、労政会館は勤労者の文化、教養及び福祉の向上増進のために、広範な市民に利用されている。しかし、東京都は八王子と国分寺の労働相談情報センターを立川に統廃合する計画を変えていない。統廃合後の労政会館施設については白紙の状態とされている。過労死、ブラック企業が社会問題となっているもとで、引き続き八王子に労働相談情報センター、労政会館を存続させるよう東京都に求めること。
 旭町・明神町地区は、本市の産業の歴史にとって地域経済の発展を願った先人の思いが詰まった大変大きな意味を持つ土地である。今後整備予定の産業交流拠点が地域経済の担い手である中小企業をはじめ、商工会議所やTAMA協会など本市のものづくりを中心とした産業分野の関係者の意見を反映させた施設・運営となるよう東京都に働きかけること。

【社会保障・介護・高齢者福祉】
4、安倍政権の掲げる「我が事・丸ごと地域共生社会」の名のもとに、高齢者、障害者、子どもなどの福祉に対する公的責任が大幅に後退しかねない。介護報酬切り下げなど社会保障費削減に反対し、必要な高齢者が適切な支援や介護を受けられるように市としての責任を果たすこと。とくに、要支援者が必要な生活援助を確実に受けられるよう日常生活支援総合事業を運営すること。生活支援ヘルパーの着実な養成と就労を実現しつつ、有資格ヘルパーのサービス提供に対して現在行っている体制構築支援を継続すること。第7期介護保険事業計画・高齢者福祉計画においては、通常の年金だけでも入れる多床室を含む特養ホームの整備を進めること。

【保育】
5、保育園待機児の解消にむけて本市は、認可保育園を中心に整備を進めてきた。市民は安心して子どもを預けられる認可保育園を求めており、中核市移行後も独自基準を設けて質の向上に取り組んできた市として、今後も認可保育園を中心とした保育施設整備によって待機児ゼロを1日も早く実現させること。
 学童保育所の待機児童解消へ、施設の整備を進めること。4年生以上の利用が条例通り可能となるよう施設と体制を整えること。

【障害者福祉】
6、障害者(児)の移動支援事業について、利用可能時間を増やし、利用時間の計算について現在の1か月単位から通年もしくは2~3カ月単位とするなど、改善すること。現在行っている利用時間を追加する「特別な事情」の範囲を広げること。また、緊急時通学時支援事業が利用しにくいという保護者の意見をふまえ、15歳未満の通学通所にも移動支援が利用できるようにすること。通所施設等の運営安定化事業について、家賃補助の見直しの名による削減を行わず、継続すること。

【子どもの貧困対策】
7、子どもの貧困対策について、首都大学と連携して行っている実態調査の結果をふまえた施策の展開を図り、ひとり親家庭への支援を強化すること。政府による高等教育無償化の動向をふまえ、現在の奨学金の対象者を拡大するとともに、就学援助対象者に対し高校入学時の学用品購入費等の助成制度をつくること。生活保護世帯の子どもの大学・専門学校進学について、世帯分離することなく認めて支援できるよう国に改善を働きかけること。

【子育て支援の充実】
8、乳児が感染しやすく、重症化しやすいロタウイルス及び、乳幼児が感染し、重症化すると難聴などの障害がのこるおたふくかぜについて、予防接種は安全性、効果も認められているものの高価なため接種を控える保護者が少なくない。ロタウイルスワクチン、おたふくかぜ予防のムンプスウイルスワクチンの定期接種化を国に働きかけ、市としても接種費用の補助制度を創設すること。
 八王子市義務教育就学児医療費助成制度は、所得制限が撤廃されたものの1回200円の窓口負担が残っている。窓口負担は、保護者の負担であるとともに、医療機関の外来事務の煩雑化、混雑化を招き、必要な受診を妨げる要因となっているため、窓口負担を廃止すること。医療費助成の対象を18歳まで拡大すること。
 核家族化が進み、子育てが孤立化しやすく新たな困難を生み、産後うつや自殺という悲劇も生まれている。産後の母体の回復には、十分なサポートが必要であり、八王子版ネウボラにおける妊産婦訪問型のサポートを拡充するとともに、宿泊型の産後ケアセンターを設置し、産後ケアを充実させること。

【中学校給食実施・給食費無償化】
9、子どもたちにとって、学校給食はバランスの取れた食事であり、健康的に成長していくために、大きな役割を果たしている。都内23区の中学校給食は、9割以上が、学校内でつくられた温かい給食実施しているが、多摩26市は、自校調理方式の学校はわずか13%にすぎず三多摩格差の最たるものである。親子方式が実施された中学校で温かい給食を選択する生徒の多さを見ても中学生と保護者の願いは明白である。温かい中学校給食の実現にむけて早急に取り組むこと。
 憲法は、すべての国民の教育を受ける権利を保障し、義務教育の無償を明記している。学校給食の普及充実と食育の推進は、学校給食法にも定められ、給食は、教育の1つとして重要な役割を果たしているが、給食費は小学生の保護者が負担する学校教育費の4割を占めている。子育て支援や教育の充実のために、学校給食費を無償にすること。

【読書のまち八王子】
10、「読書のまち八王子」を市民とともに推進するために、各図書館の図書資料の充実、地区図書室の開館時間増や図書館分室化を進めること。計画段階の「憩いライブラリ」を、図書館法に基づく図書館として位置づけ、質量ともに充実させること。
 学校司書が全小中学校に週一日配置され、児童・生徒・学校から歓迎されるとともに、さらなる充実を求める声が上がっている。学校司書を増員して、全児童・生徒が学校司書による図書活動を経験できるように、特に大規模校では早期に配置日数を増やすこと。

【教育環境整備・教員の多忙化解消】
11、子どもたちに豊かな教育を保障するために、国・都に対して30人学級の実現をめざして小学校3年生以上の35人学級を順次実現していくよう強く働きかけること。都教委の調査で過労死ラインとみる週60時間を超す教員が中学校で68.2%に上るなど深刻な教員の多忙化解消へ、この間の取り組み結果をふまえて必要な改善策を講じること。

【仕事起こし・公契約条例等】
12、市民からも事業者からも喜ばれ経済効果の高い居住環境整備助成事業を引き続き実施すること。はばたけ商店街補助事業の対象とならない個店でも活用できる商店版リフォーム助成(設備・備品購入補助金)を実施すること。公共事業における設計労務単価が下請け労働者の賃金にも反映されているかどうか実態調査をすること。工事案件について建設業退職共済(建退共)が正しく活用されているかどうかを調査し、優良な事業者を表彰するなどして制度の利用推進を図ること。全国で55自治体に広がっている公契約条例を本市でも制定すること。

【開発・まちづくり】
13、川口土地区画整理事業の環境影響評価手続きでは、準備書に対し都知事から環境保全措置の不十分さが指摘された。都の意見に対する対応措置は不十分であり、実質的に開発審査基準を上回る長大法面の危険性など解決されていない点を強く指摘する。事業費及び資金計画について、適正な時期に明らかにするとしているが、今年度中の事業認可申請となれば新年度予算で区画整理事業への助成金支出が見込まれるだけに、事業概要が明らかにされないことは重大であり、市民無視、議会軽視と言わなければならない。ただちに明らかにすること。包括的な業務代行であると説明がされてきたが、保留地処分について従来と違う説明になってきており、組合や市の負担にも関わる重大問題である。業務代行契約の内容を早急に示すこと。
 北西部幹線(都計道3・3・74号線)について都施行となったが、東京都と市の財政負担の考え方について早急に明らかにすること。
 川町で計画されているスポーツパーク計画は大量の残土を持ち込むもので、この地域の安全性をおびやかすものである。スポーツ施設の建設及び管理計画もまったく不十分で、住民が納得できるものではない。そもそも施設ができるかさえ疑わしく、市街化調整区域の開発は基本的には認めないという基本構想の姿勢を貫くこと。
 一般財団法人八王子市まちづくり公社に役職付き職員を派遣したが、まちづくりの重要部分が公社を通して行われることとなり、議会での検討や監視が困難となる。これを改め、まちづくりは企業や事業者主体ではなく市民参加のもとに進められる体制にすること。

【災害対策】
14、今年10月の台風21号により市内各所で被害が発生した。土地に何らかの工作が加えられたところで災害が発生していることから、今後の土地改変に対する教訓としなければならない。原因究明を行い復旧の時期など市民への説明を早急に行うこと。館町つつみの池の法面下部からも水が湧き出しているなど、今回被害の出なかった市内の危険個所についての調査を進めること。
 都道が不通となっている戸沢峠の建設残土崩落事故は明らかに人災であり、東京都と協力し責任を明らかにすること。
 加住小学校で土砂崩れによる大きな被害が発生したほか、81校で雨漏りが発生したとのことであり、早期に対策を講じること。

【地球温暖化防止、再生可能エネルギー普及】
15、今月ドイツのボンで開催されたCOP23で地球温暖化対策は待ったなしの課題であることが改めて確認された。米国大統領によるパリ協定離脱表明などの逆流に対し、米国内では連邦政府方針に反対し州政府や産業界が参加を次々表明し、米国全産業の50%を超えると報道されている。日本政府の石炭火力発電の推進や原発再稼働方針は改めなければならない。福島第一原発事故以来再生可能エネルギーへの転換を求める声がいっそう強まり、多くの自治体が積極的な取り組みを行っている。本市でも市民参加のもとに再生可能エネルギー導入検討委員会を立ち上げ検討してきた。太陽光発電への助成の充実をはじめ、賦存量の多い太陽光や太陽熱の更なる活用を目指し、利用量の低い木質バイオマスについては活用方法の検討を行うこと。

【米軍横田基地関連】
16、米軍横田基地内に自衛隊の航空総隊司令部が移転し、米軍の訓練が激しくなるばかりか、日米共同作戦、共同訓練も広がっている。轟音の激しい戦闘機の飛来が相次ぎ、夜間・早朝飛行の横行で横田基地関連の航空機騒音は、近年顕著に拡大している。さらに、本市の北部では日常的に米軍の低空飛行、旋回訓練が行われており、市民の生活を脅かしている。24時間測定のできる常時測定基地を設けて、騒音測定を強化し、その結果を時間帯別に示して被害の大きさを共有し、米軍にもデータで示して抗議すること。沖縄などで墜落事故が相次いでいるオスプレイは、メーカーや米軍も認める致命的な欠陥があり、事故率も上昇した。重大事故を引き起こす危険性が高いオスプレイの飛来と2年後に迫った横田基地へのオスプレイ配備計画に反対すること。

【平和行政・核兵器廃絶】
17、世界に先駆けて戦争を放棄し、戦力を保持しないと定めた日本国憲法は、戦後の日本の平和的な発展の土台となってきた。世論調査でも憲法9条を変える必要がないと答える声が多数である。憲法の平和主義に基づき、世界の恒久平和実現へ積極的な平和行政に取り組むこと。
 今年7月、核兵器の使用や核兵器による威嚇などを全面的に禁じる「核兵器禁止条約」が国連加盟国の3分の2の賛成で採択され、各国で署名・批准も進んでいる。日本の被爆者とともにこの条約を結ぶために大きく貢献してきたICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)はノーベル平和賞を受賞した。本市の平和首長会議加盟をふまえ、核兵器廃絶へ積極的に行動するとともに、被爆国日本が率先してこの条約に署名し批准するよう、政府に求めること。

以上