2008年度八王子市予算編成及び行政運営に関する重点要望書

八王子市長 黒須隆一 殿

2008年度八王子市予算編成及び行政運営に関する重点要望書
2007年11月2日
日本共産党八王子市議会議員団
市議会議員 山口 和男
同    山越 拓児
同    松本 良子
同    鈴木 勇次
同    狩野 宏子

 56万市民のために日夜ご努力をいただいております市長はじめ職員の皆様に心から敬意を表します。
 昨年、要望いたしました乳幼児医療費助成制度の所得制限撤廃と義務教育就学児医療費助成制度の実施、要介護高齢者の障害者控除対象者認定制度などが具体化され、さらに随時関係所管に届けている市民要望に対しても、スピーディに誠意をもって対応していただいていることに感謝を申し上げます。
 今日、いわゆる構造改革路線のもとで貧困と格差が拡大し、福祉の増進を目的とする地方自治体の果たす役割はますます重大になっています。政府は、世論の批判に対し、基本路線を改めることなく、社会保障費の削減・抑制、不安定雇用の拡大、大企業への優遇税制などにはメスを入れようとしていません。
 黒須市長は、「安全・安心は市民にとって最大の福祉」と発言されてきましたが、安全・安心をおびやかす根本である貧困や差別・格差の解消に真正面から取り組むことが強く求められています。
 そこで、2008(平成20)年度八王子市予算編成及び行政運営にあたって、とくに重要と考える点につきまして、以下の通り要望書としてまとめましたので、新年度予算に反映していただけますよう、よろしくお願いいたします。

1、  2006年度の住民税増税に対して2200件の苦情・問い合わせが殺到したのに続き、2007年度は定率減税の全廃などが加わってさらなる庶民増税が行なわれ、苦情・問い合わせの数は6000件を超えた。2006年度の介護保険料値上げの影響は、納入率の低下となって決算数値にあらわれた。市民一人あたりの給与・年金収入が減少し、生活保護世帯や就学援助受給世帯が増加するなど、市民生活の深刻さが増すなか、市民の生活を守るため、国民健康保険税(介護分を含む)、保育料、下水道料金、公共施設使用料など公共料金の値上げを行わないこと。さらに、個人市民税や国民健康保険税の減免制度を確立・拡充すること。市政世論調査の重点要望として高齢者福祉が第1位、介護保険も第6位と順位を上げていることから、東京の自治体21区19市2町行なっている介護保険料独自減免、11区13市2町で行っている介護サービス利用料の独自減免制度を実施すること。
 大企業は、バブル期を上回る利益をあげながら、法人税率は引き下げられたままであることから、増税の負担増が続いている庶民との間で著しい不公平を生じている。日本経団連は、社会保障財源を消費税でまかない、その税率を17%とする試算を示している。いきすぎた大企業優遇の税のあり方をあらため、低所得者の生活に重くのしかかる消費税の増税を政府が行なわないよう、国に働きかけること。
2、  来年4月に実施予定とされている「後期高齢者医療制度」は、①75歳以上高齢者を国保や健保から追い出し、高い保険料を年金から天引き、払えなければ保険証の取り上げとなる ②受ける医療は包括払いとなり、保険で使える医療に上限をつける ③70歳から74歳の高齢者も窓口負担が1割から2割になり、65歳以上の国保税も年金から天引きとなるなど、とても「高貴」と言われるような扱いとはほど遠いものである。見直しや国庫負担の増額で高齢者の負担軽減を求める意見書は、全国で短期間に230を超え、三多摩でも20市1町が意見書を提出するなど、大きな問題となっている。政府は保険料徴収や70歳から74歳の窓口負担の引き上げを一時凍結することを決めたとされるが制度そのものは実施される。マスコミからも「姥捨て山」との批判の声があがっている後期高齢者医療制度を中止するよう強く国に要請すること。
3、  構造改革によって貧困と格差が拡大し、医療難民、介護難民、ネットカフェ難民といわれるような深刻な事態が進行している。とりわけ、国民健康保険における保険証の取り上げ=資格証の発行は、国民皆保険制度をつきくずすものとなっており、市民の命にかかわる重大な問題である。愛知県の場合、滞納世帯に占める資格証の発行割合は、1.0%で、他の都府県と比べて極めて少ない割合に留めている。特に名古屋市の発行件数はわずか15件である。名古屋市保険年金課は、「資格証明書の交付は、行政が縁切り宣言するようなもの」と言い切り、資格証明書の問題点を指摘している。「縁切り宣言すれば、市民との接触が途絶え、収納率は上がらない」との言葉どおり、大量の資格証明書を発行している他の政令指定都市よりも、名古屋市のほうが高い収納率を維持している。愛知県も「資格証明書の発行は、滞納者の実態をよくつかみ、面接なしの発行は行うべきではない」との姿勢を示しており、他府県と比べて発行数を少なく抑えている要因となっている。本市でも、名古屋市のような事例に学び、資格証に関しては、該当世帯を直接訪問するなど実態を把握し、可能な限り発行しないこと。
4、  「本市の財政状況に大きな好転はなく、依然として厳しい財政運営」(平成20年度予算編成方針)の中、巨額の費用を要する北西部幹線道路計画や自然環境や住環境に悪影響を及ぼすトラックターミナル構想は中止すること。総事業費358億円(うち税金投入168億円)の八王子駅南口再開発について、各地で談合を繰り返し、本市でも指名停止処分中の大林組などの企業に巨額の税金を投じる市民ホールや(仮称)中央地域総合事務所といった公共施設の建設を任せることは認められない。市財政や市民生活に重大な影響を及ぼす本事業を抜本的に見直すこと。
5、  圏央道の高尾山トンネル工事が、土地収用も含め強行されようとしている。これまで八王子城跡トンネル工事によって滝枯れが発生したことにみられるように、高尾山トンネル工事が強行されれば、高尾山の自然環境に重大な影響を与えることは明らかである。すでに、南浅川町の一部の沢では、工事に伴う沢枯れが発生していることは重大である。さらに、6月23日一部開通した八王子ジャンクションではわずか3ヶ月で23件もの事故が発生していることも問題である。ミシュランによって三つ星に選ばれた東京のオアシス、高尾山の自然を守るために「八王子城跡での滝枯れの原因を圏央道のトンネル工事」と認めた市長として、国に対し、工事の中止を求めること。
6、  食育・給食実務者検討会の結果をすみやかに公表すること。三多摩で実施時期が決まっていないのは本市だけであり、学校給給食法に基づく温かい中学校給食の実施を一日も早く明らかにすること。
 小中学校で40人の定数いっぱいの学級は、平成19年4月1日現在、小学校で25学級、中学校で11学級ある。一人ひとりの子どもにゆきとどいた教育が行えるよう、独自の手立てを講じ、40人以上学級のないようにすること。
7、  全国学力調査の結果が公表されたが、マスコミからも「これならもう要らない」「今回の費用は77億円にのぼった。来年度の準備も始まっているというが、もうやめた方がいい。同じ予算なら、教員を増やすことなどに有効に使うべきだ。」(朝日新聞10月20日付)といわれている。学力テストの結果を学校ごとに順位をつけて公表し、成績上位の学校に予算を多く配分する方針まで示した足立区では、学校に過度の圧力となり、平均点を上げるために校長や教員がテスト中に教室を回り、誤答を指差し正解を誘導したり、一部の児童の答案を集計から除外するなどの不正が行われ、大問題となっている。学力定着度調査は、抽出調査で十分であり、悉皆調査となる学力テストは国・都・市レベルのいずれも「確かな学力」を身につけることにはつながらず、過度の競争をもたらすものであり直ちに中止し,その費用を特別支援教育など教育の充実のために使うこと。
 2006年9月21日東京地方裁判所の判決をふまえ、入学式・卒業式など式典の際に、日の丸・君が代を義務づける通達は撤回し、小中学校で日の丸・君が代の強制を行わないこと。
8、  保育所待機児数は、新基準でみても2003年4月の247名から増え続け、2007年4月には336名を数えている。児童福祉法には「保育にかける場合、申し込みがあれば、市町村は保育しなければならない」と市町村の保育責任を規定しており、保育所待機児の解消のために、認可保育園の増設、公立保育所改築・増設を行うこと。武蔵野市や日野市などが行っている(認可外保育施設入所児童保育助成金=月額2万円)ように、認可保育園に比べて保育料が高い認証保育所、保育室、家庭福祉員を利用している方の経済的負担を軽減する措置を講じること。
9、  介護保険の改定に伴い、日中独居世帯への生活支援ホームヘルパー派遣は認められないとされ、利用者と家族、ケアマネジャーなどの間では混乱が生じ、元通りにヘルパーの派遣を求める声があがっている。日中独居世帯への生活支援ホームヘルパー派遣についてはケアマネジャーの判断を尊重し、実態に即したヘルパーの派遣が認められるように市として対応すること。介護施設の食費・居住費について国や都に対し負担軽減策の拡充を求めるとともに、市独自の自己負担軽減制度を設けること。
10、  障害者自立支援法の施行により応益負担による負担増のために、利用を控えるなど様々な問題が生じ、政府与党からも見直しの声があがっている。10月30日には全国から6500人の障害者、関係者が集い、自立支援法の抜本的見直しを要求した。市としても障害者団体などから直接実態を把握し、応益負担の撤回を国に強く要求すること。荒川区が所得制限なしで在宅の障害者の全サービスの利用者負担を3%に軽減しているように、市独自の利用者負担軽減策を実施し、減収となっている施設の運営支援を行うこと。
11、  地域サービスあり方検討委員会は、ゆめおりプランに示された6地域区分に基づき、(仮称)地域総合事務所を1か所ずつ整備し、それ以外の事務所は地域活動その他に使えるようにするとの提言をまとめようとしている。住民記録の届出、国保、年金、介護保険などの届出・申請の窓口を奪うことは、市民サービスの低下となることは明らかである。検討委員会の提言の公表とともに、メリットとされる点だけでなく、デメリットについても明らかにし、地域ごとに十分な説明、合意を前提として慎重に対応すること。
12、  都立八王子小児病院の存続・拡充について、「八王子地域の保健医療に関する検討会」最終まとめの立場を堅持して全力を尽くすこと。本市と東京都の間で行われている協議の状況を明らかにし、八王子市の小児医療水準を後退させないために医療関係者や広範な市民と力をあわせて取り組むこと。
 2004年~2006年に妊婦の救急搬送の拒否が5849件にものぼり、産科医不足の深刻さが初の全国調査で明らかになった。周産期医療センターなど23区に比べて遅れている多摩地域における小児医療体制の充実を東京都に対して強く求めること。
 近年、経済的理由から妊婦健診を受けない妊婦の増加が指摘されている。未受診のままの出産はリスクが大きくなり、母子の生命の危険につながり、分娩医療に過重な負担をかけることにもなる。厚生労働省の通達を受けて、東京都と協議中とのことだが、安心して子どもを産めるよう妊婦健診の無料化を積極的にすすめること。
13、  石原都知事は2007年4月の都知事選で低所得者への都民税軽減や中学3年生までの医療費無料化を公約した。しかし、今日公約が守られようとしていない。中学3年生までの医療費無料化については、「実現に向け準備を進める」(第2回定例会答弁)とされているものの、実施時期は不明確で、財政力の弱い市町村に対する財政支援については明らかになっていない。東京都による市町村への財政支援とともに中学3年生までの医療費無料化が実現するよう市長会を通して強く求めること。
14、  本市は中国及び韓国の3市と海外友好交流協定を結び、交流の発展が始まっており、草の根の平和友好のとりくみをいっそうすすめること。そのためにも、戦争放棄を宣言した憲法9条を守ることを市長自らが明確にすること。世界連邦平和都市宣言の議決30周年となる来年度に、非核平和都市条例を制定し、8月2日を八王子平和の日とするなど、平和行政をさらに充実させること。