2014年度八王子市予算編成に関する重点要望書
八王子市長 石森孝志 殿
日本共産党八王子市議会議員団
市議会議員 山越 拓児
同 山口 和男
同 松本 良子
同 鈴木 勇次
同 青柳有希子
貴職による市民福祉増進へのご努力に敬意を表します。
2013年度において、私どもが要望しておりました若者サポートステーションの開設、分譲マンション耐震化助成制度の創設、孤独死防止のための見守り協定の締結、認可保育園を中心とした保育定員の増員、陶磁器類の資源化などが実現、前進したことを評価し感謝申し上げます。
さて、デフレ不況からの脱却をめざす安倍内閣の経済政策により、景気回復傾向にあると言われていますが、国民の大多数がその実感はないと答え(景気回復を実感する…18.5%、実感しない…76.4%、時事通信社10月調査)、労働者の平均賃金は低下を続けています。
このような中で安倍内閣は来年4月からの消費税増税に加え、社会保障改革推進法に基づいて、介護、医療、年金、生活保護などあらゆる分野において、国の責任を投げ捨て社会保障を解体し、国民の自己責任にすりかえようとしています。
その一方で、憲法「改正」の動きとともに集団的自衛権行使に向けた準備を進め、国家安全保障会議の設置や特定秘密保護法案の制定をめざしています。在日米軍のオスプレイ配備は沖縄だけでなく、東京の横田基地への配備が検討されるなど平和の問題でも安倍内閣は国民の願いと対立する深刻な矛盾を広げています。
このような状況の中、日本国憲法の立場に立って、自治体が住民の命と健康を守り、福祉を増進する役割を発揮する必要があります。多くの市民参加のもとで議論され、練り上げられた基本構想のもとで基本計画「八王子ビジョン2022」が策定され、さらにその実施計画であるアクションプランが発表されました。平成26年度予算編成方針も示されておりますが、受益者負担の見直しや使用料等の見直しに言及するなど市民生活への影響が懸念されます。
市長は、中核市移行で「ワンランク上のまちづくりをめざす」としているところですが、今後の条例制定の中で具体化し、住民福祉の増進という自治体本来の仕事に努めてください。
新年度の予算編成にあたり特に重要と考える点をまとめました。予算並びに今後の市政運営に反映していただくよう、よろしくお願いいたします。
1.安倍内閣は、来年4月から消費税を8%とする増税(8兆円)を「決断」する一方、景気の腰折れを心配して「景気対策」(5兆円)を打ち出しました。しかし、その内容は公共事業の積み増しと大企業減税であり、消費税増税が奪う国民の所得を補うものではありません。社会保障制度においても給付の削減と負担増の計画が目白押しであり、社会保障の充実や財政再建など増税の口実が成り立たなくなっています。本市の平成26年度予算編成方針は、消費税率の引き上げが市の歳出予算の執行に与える影響を指摘し、事業費全体の削減と使用料などの歳入確保を強調しています。こうした市の施策と市民生活に重大な悪影響をもたらす来年4月からの消費税増税の中止を求めること。消費税率引き上げを理由とした使用料の見直し、受益者負担の見直しによる保育料、給食費、下水道料金、公共施設使用料など公共料金の値上げを行わないこと。
2.すでに国民健康保険運営協議会において、「税率改定のルール化」なる動きが提示され、国保税引き上げの動きが顕在化しています。まずやるべきは、国保税未納者への親身な対応で徴収率の向上を図り、改善することです。年金生活者や非正規雇用、無職者など低所得者が多い中、国保税を引き上げることは市民の暮らしに大打撃を与えることになります。国保税値上げの検討を中止し、国に対して国庫負担の増額、都に対して補助金の増額を求めること。来年度は後期高齢者医療保険料の改定時期にあたりますが、高齢者の暮らしを脅かす保険料の値上げ改定を行わないよう国とともに、財政力の豊かな東京都が応分の役割を果たすよう働きかけること。
3.労働者派遣法をはじめとする労働法制の規制緩和で非正規雇用が労働者の4割近くにまで増え、青年では二人に一人が非正規雇用となっています。青年にとって正社員への道が狭き門となるだけでなく、労働者を長時間働かせ使い捨てにするブラック企業の横行で、青年が追い詰められています。仕事がないことからひきこもりとなる例も増え続けています。今年度、はちおうじ地域若者サポートステーションが開設されました。全国的には、町田市でひきこもりの実態調査が行われ、秋田県藤里町でひきこもりの青年を一人一人訪ねて職業訓練と就労に結びつけているという先進例も出てきています。本市アクションプランでは、平成28年度に1千万円の予算がようやくつくことになっていますが、不十分と言わざるをえません。先進例に学び、職業訓練を充実し就職先として市内企業をあっせんするなど、青年と仕事を結びつけられるよう予算を増額し、施策をさらに発展させること。
4.地域包括ケアの中心を担う地域包括支援センターの設置数を前倒しで増やし、職員の増員も支援して、市の責任で体制強化を図ること。第5期介護保険事業計画の最終年度であることから、特別養護老人ホームや老人保健施設の増設及び在宅介護サービス提供体制について、計画通り整備を進め、早期開設を図ること。安倍内閣は、要支援1・2を保険給付の対象から原則として外すことや、特別養護老人ホームへの入所は「要介護3」以上に限ること、ホームヘルパーの生活支援は廃止し、保険外の市町村事業とする介護保険制度の改悪を進めようとしています。こうした動きに自治体の責任者として反対の意思を示し、行動すること。
5.新地域防災計画(素案)は、減災目標として、想定死者415人を6割減の166人に、想定避難人口12万8646人から4割減の7万7188人に、全壊・焼失棟数1万3317棟を6割減の5327棟とするとしています。これらの目標を達成するために適切に予算措置を行うこと。とりわけ市所有の公共建築物の耐震化率(平成19年度末77.9%)を平成27年度末までに100%とすることとなっており、平成26年度において十分な予算を組むこと。土砂災害防止法による市内4000ヶ所の区域指定がすすめられ、一部がすでに実施されています。区域指定に伴う土地評価の下落について税制上の対応をすみやかに行うこと。
6.本市の保育所待機児は、この間定員増の努力を反映し、4月1日時点で前年度に比べ122人減ったものの、なお253人を数え、都内自治体の中でワースト10となっており、引き続き解決の求められる重要課題となっております。保育所待機児の解消に向け、市立保育園の新設、増改築を含む認可保育園を中心とした保育定員の拡大を行うこと。子ども・子育て支援新制度に基づいて保育制度が大きく変えられようとしていますが、新制度への移行による混乱や負担増が起こらないようにすること。
7.就学援助について平成24年度決算では、小学校16.91%、中学校20.57%と高い認定率となりました。暮らしが大変な中、申請漏れのないように丁寧な対応を行うこと。生活保護基準が引き下げられましたが、この引き下げを就学援助に連動させないこと。子どもの貧困化が進んでいることから、認定基準を現行生活保護の1.1倍から従前の1.3倍に引き上げること。就学援助事業の対象項目にクラブ活動費、生徒会費、PTA会費を追加すること。
8.中学校給食の喫食率は、主要な「デリバリーランチ方式」が依然20%を割る一方、小中一貫校における「自校方式」では、加住中が93.3%、館中が98.4%、三中が89.5%と高くなっています。また、今年から始まった川口中学校の「親子方式」は約71%に上り大変好評を得ており、「温かい給食」が中学生に待たれていることはすでに明らかです。市長の公約である「親子方式」の拡大についてアクションプランで一言も触れられていないのは重大です。親子となる小中学校の規模やエレベーターの設置など様々な条件をふまえ、順次「親子方式」の拡大を図ること。
9.学校図書館司書について、市民から提出された全小中学校への司書配置を求める議会請願が全会一致で採択されました。署名数は1万人を超え、大きな期待を集めました。現在、読書推進担当サポーターが8名配置されていますが、市民の期待に応えるため、読書推進担当サポーターの増員とともに専任司書の配置を進めること。
10.居住環境整備事業並びに再生可能エネルギーの普及促進事業は、市民要求に合致し利用の多い補助事業となっています。年度途中での予算不足による事業打ち切りが起こらないよう当初予算を大幅に増額すると同時に、年度途中では補正を組むなど機敏に対応すること。さらに、居住環境整備事業の対象を拡充し、住宅リフォーム助成制度として実施することは、市内の中小建設関連事業者の仕事起こしとして大きな支援となるので、実施へ向けた検討を行うこと。住宅の耐震化促進事業では、簡易耐震改修など改善の努力が行われてきましたが、さらに診断から改修工事までを一体に進められるようにし、市民にも事業者にも利用しやすいものにすること。公契約条例は、賃金の引き上げなど労働環境の改善とともに品質向上への効果も大きく、新たに足立区でも制定されるなど新しい動きも受けて早期に制定すること。
11.南大沢における民間の生ごみ資源化施設は、悪臭の発生により現在操業休止となっていますが、住民に「臭いの心配はない」と説明して操業を始めており、その保証が得られないまま再稼働は許されません。また、昨年度行われた生ごみ資源化モデル事業は、生ごみをこの民間施設に搬入しましたが、収集コストの課題もあり、今年度段ボールコンポストに切り替えられ、参加世帯数は約190世帯へと減り、参加している市民からは扱いが非常に難しいという声が上がっています。ごみ処理基本計画では、生ごみ資源化に「10年後10%の世帯が取り組む」ことを目標としています。埼玉県戸田市(人口13万人、5万9千世帯)は、生ごみ資源化を「花と福祉のまちづくり」と結びつけて展開しています。生ごみバケツを無償で貸与し、生ごみの回収の際に花の苗と交換する仕組みで2100世帯が参加、たい肥作りや花苗栽培には高齢者と障害者を積極的に雇用しています。たい肥は野菜の栽培に利用され、花苗交換の場所でも販売、学校給食にも使用されて、参加希望者が増え続けています。こうした経験に学び、やれば楽しくなり、メリットを十分に感じられる生ごみ資源化を進めること。
12.川町スポーツパーク計画地に55万m3もの残土を持ち込むことは、この計画地が土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域とされていることからしても一層の危険を作り出すものです。本市はこれまで市街化調整区域の開発は抑制するとして、こうした開発は認めないとしてきました。その姿勢を貫き、市民の安全を脅かす本計画は認めないこと。サッカー場の確保は、このような自然破壊の残土事業によって行うのでなく、富士森陸上競技場や他の用地により行うこと。
13.川口物流拠点開発は八王子市西部地域の貴重な里山を壊す自然破壊と住環境への重大な影響をもたらします。また、都内にある4か所の物流拠点の稼働率は現在50%程度であり、さらに他の未利用事業用地や工場跡地などと競合していることから、本事業の成立自体が危ぶまれ、将来市に重大な負担をもたらしかねません。土地区画整理事業の事前アセスでは、オオタカの営巣木のある南斜面地域の開発案も検討していることが明らかになりましたが、オオタカ保護に対して重大な後退であり、適正な事業進捗とはいえません。直ちに事業を中止すること。北西部幹線は、掘割構造がまちを分断することや災害にも弱い道路であることが指摘されており、莫大な建設費を要し市の財政を圧迫するため、現行計画を直ちに中止すること。
14.本市は、2015年4月から中核市移行をめざしていますが、法定移譲事務及び関連する単独事務や補助金について東京都と協議のうえ、必要な負担額を37億2千万円とし、地方交付税措置でまかなえる範囲としました。今後、政府による地方交付税制度(臨時財政対策債問題を含む)の見直しの動きを注視し、必要な財源確保に努めること。事務移譲に伴う条例制定などにあたっては、十分に関係者や市民の意見を聞く機会を設けるとともに議会にも積極的な情報提供と検討の機会を保障し、移行して本当によかったと市民が感じられるようにすること。事務移行及び移行後の事務に必要な人員体制をしっかりと構築すること。
15.福島第一原発事故から2年8か月がたちました。私どもは広野町、楢葉町、富岡町を訪ねてきましたが、被災した当時のままになっている家屋や汚染された土が山積みの仮置き場などを目の当たりにしてきました。原発事故は、汚染水問題も深刻な状況であり、収束どころではありません。被災者のみなさんは、いまだに先の見えない不安な状況が続いています。八王子市にも300人以上の被災者が避難しています。市長がこの間、復興支援のためにいわき市などを訪ね、職員の派遣を行っていることを大いに評価します。さらに原発事故被害地の実態を直接確認されることを期待します。市内への避難者の無料健康診査など支援を継続するとともに、被災地の農産物を道の駅で販売するなど拡充すること。放射性物質の半減期が長期にわたることから、きめ細かな空間放射線量測定を行い、必要な場合は除染すること。それらの経費は東京電力に請求すること。