2025年第1回定例会本会議|2025年度予算案に対する反対討論|2025年3月27日 望月しょうへい
それでは2025年度八王子市一般会計、各特別会計及び公営企業会計予算ならびに関連する議案につきまして日本共産党八王子市議会議員団を代表し、反対の立場から討論を行います。
わが国では財界や大企業の目先の利益が優先される中、「失われた30年」という言葉が象徴するように長きにわたって経済の停滞そして衰退が続いてきました。大企業の内部留保は2023年度の法人企業統計によれば539兆円となっており、2012年度と比較して200兆円以上増加している一方で、労働者一人当たりの賃金は2012年度と比較して1.13倍にとどまっています。政府も賃上げや国内投資に回っていないことが内部留保の増加につながっていると認めています。このように経済政策の失敗で上がらない賃金、上がらない年金のもと異常な物価高騰が市民生活を直撃し、怒りとともに悲鳴の声が上がっています。こうした現状をみれば、市長が提案説明の中で予算編成の前提として示された賃金上昇が物価上昇を上回る、または個人消費が増加するとともに企業の設備投資も堅調な動きが継続し、民間需要主導の経済成長となることが期待されるとした国の経済見通しはいかに市民の実態と乖離しているかがわかります。
私ども会派でも昨年、2024年度予算に対する討論の中で、2019年度と比較して2022年度では差し押さえ件数が4倍に激増していることを示したうえで市民生活は厳しい状況であると指摘しました。その後も市民生活はさらに追い詰められています。2024年版の市税白書によりますと2019年度の差し押さえ件数が1469件であったのに対し、2022年度が5952件、そして2023年度は1万2162件と2019年度と比較しても2023年度の差し押さえ件数は8倍を超える異常な事態となっています。一方で、一件当たりの差し押さえ額は2019年度が16万3376円であるのに対し、2023年度は5万9447円となっており、差し押さえる財産すらない方もいます。
このように厳しい市民生活に真正面から向き合い寄り添う姿勢が求められる中で、新年度予算案における最大の問題点は、8年連続となる国民健康保険税の値上げです。市民からも毎年、国民健康保険税の値上げ中止を求める請願が提出されています。私ども会派として、これまでも高すぎる国民健康保険税の値上げを中止し、負担軽減を進めるべきと主張してきました。本市が示したモデルケースでも給与収入400万円の夫婦と就学児の子ども2人の4人世帯では、年間58万5500円となっています。給与収入に占める国保税額は14.6%、年金収入400万円の夫婦2人世帯でも1割近い負担となっています。あまりにも重すぎる負担です。昨年度決算における審議の中で、私どもは保険給付費で保険税収入の約1割に相当する13億7000万円もの不用額を出していることを明らかにし、値上げする必要はなかったと指摘しました。今回、東京都は市が都に対し納める納付金を13億9600万円減らしました。規模は不十分ですが、これは東京都が私たちの指摘を実質認めたからにほかなりません。しかし市はその減額分を市民に還元せず、これまで行ってきた一般会計からの法定外繰り入れを多摩26市で初めて0円にすることで、負担増をさらに進めようとしていることは問題です。これまでも市は他の被用者保険との公平性のために繰り入れの削減や国民健康保険税の値上げはやむを得ないとの認識を示してきました。また市のホームページには、国民健康保険は、病気やケガの治療の際に、安心して医療を受けていただくための支え合いの制度です。と書かれています。しかし、本来は支え合いの制度ではありません。国民健康保険法の第一条には、この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。と書かれています。法に明記されているように、国民健康保険制度は社会保障制度であり、国民皆保険制度の根幹を担うものです。また社会保障は憲法に基づいて国民一人ひとりに保障された権利であり、その実行を担う責任は国や自治体にあります。そして本市議会でも2023年12月議会において、国に対して全会一致で上げた意見書においても示されているように、被保険者の所得水準に対し、保険税の負担率が高いなど構造的な問題を抱えていることは誰もが認識をしています。社会保障は支払う能力に応じた負担という応能負担が原則です。たとえ国や東京都が社会保障を守り財政支援を行うという責任を果たさないもとでも、最も大事な命に関わる制度において一般会計からの繰り入れを維持し、拡大していくことで市民負担を増やさないということは市の責任として当然のことです。それにもかかわらず、値上げ抑制のために実施すべき一般会計からの法定外繰り入れを行わないことや、納付金が下がったもとでも国民健康保険税の負担を増やし続ける市の姿勢は決して認められず反対です。
次に市の職員体制についてです。特に生活保護行政は困難を抱えた市民が最後の砦として頼る重要な部署ですが、事業執行の根幹である人員体制は不十分です。本市では福祉部職員による不適切発言を受け、二度とこのようなことを起こさないという決意のもと、再発防止に向けた取組を示しています。今年度は取組スケジュールの最終年度でした。どのような状況下でも人権侵害や不適切な運用が許されないことは当然のことですが、全国的に問題が続発している根幹として、ケースワーカーの人数が不足し体制が脆弱となっていることが指摘されています。全国的に取り組みが評価されている小田原市においても問題が発覚したのちにまず取り組んだことは人員体制を拡充することでした。社会福祉法では一人のケースワーカーが担当する世帯数を80世帯とし、標準数を定めています。2016年4月1日時点で小田原市におけるケースワーカーの担当世帯数は91.3世帯でしたが、今年度7月1日時点で、平均担当世帯数は82.8世帯まで改善しており、専門職の配置とともに、ケースワーカーを増員し社会福祉法における標準数の充足に向けた努力を続けています。しかし本市では、標準数の充足には遠く及ばず、問題発覚後の2022年4月時点で平均担当世帯数は110.5世帯であったのに対し、昨年4月時点では114世帯となっています。問題発覚後から現在に至るまで人員体制が改善されるどころかむしろ悪化している状況にもかかわらず、体制の強化を図ってきた。適正な配置に努めているとした市の姿勢は認められず反対です。
次に日中活動系事業所運営安定化補助金、いわゆる家賃補助について月額上限10万円をさらに月額2万円減額し、年最大24万円引き下げるため2600万円の予算を削減することも反対です。日中活動系事業所は障がいを持つ人に日常生活を送るための支援をしている事業所であり、障がいを持つ方の社会参加を促進するうえでも重要な存在です。私どもはこれまでも市が本来果たすべき施設整備を障がいのあるお子さんを持つ保護者の方などを中心に地域で設立された経過や赤字事業所が4割に増えていることも明らかにして家賃補助継続と拡充を求めてきました。議会での議論だけでなく、施設側からも家賃補助をなくさないでほしい。このままでは運営がやっていけないと繰り返し切実な声とともに要望が出されていることは市も把握しているはずです。それにもかかわらず、市は昨年12月16日に行われた事業者向け説明会においても、明確な減額方針を伝えず、金額も示されていません。さらに私どもが連絡した事業所のサービス管理者の方は補助上限額が減額されることを3月時点でも知りませんでした。施設運営において重大な影響を及ぼす決定が事業者に対し明確な説明もないまま補助上限額が減額されることは決して認められません。事業者はすでに人件費だけでなく車両の維持費などコスト削減に向けたあらゆる努力を行っていますが赤字もしくは赤字ギリギリの運営となっています。障がい者の地域における居場所を守るうえでも補助減額を中止するべきです。
カーボンニュートラルをめざす取り組みですが、地球の温暖化が止まらず、危機的状況が進行するなか、議会から喫緊の課題であると提言がされたばかりです。ところが、第一の柱として推進を求めているZEB事業は全くありません。カーボンニュートラルに直結する環境部の3事業、環境教育・環境負荷の低減・再生可能エネルギーの普及、いずれもが予算削減という事態です。再生可能エネルギー普及事業では昨年度比21%以上の削減です。同事業は2010年度から開始され、2012年には予算額1976万4000円でした。しかし、新年度予算はその41%である814万7000円でしかありません。同事業の予算額は少額ですが、市民の再生可能エネルギー利用を喚起し、2023年まで累計1466工事、25億8500万円の設置工事により6845キロワット以上の発電効果をあげました。しかし、本年3月の議会からの提言にもかかわらず、年々予算減額する市の対応は、気候危機対策に逆行するもので見過ごすことはできません。カーボンニュートラルを本気で目指すのか疑いさえ持つものです。
川口区画整理事業についてですが、事業進捗率は37.2%であるのに対し、助成金交付率が59.1%に達しています。市は、これまで事業進捗部分の点検や確認をして助成金を交付すると議会答弁してきました。ところが、この乖離の理由を質すと「事業組合の財政状況を判断して交付した」と答弁しました。厳格であるべき執行上の約束が果たされていないことは重大な問題です。今後の助成金交付も同様の考えで行えば、47億2千万円の助成額さえ増やされる可能性があり、このような助成金交付は認めることはできません。当初工事計画が変更され実施しない部分の助成額も減額されないまま新年度においても予算化されていますが認められません。
最後に、他の会派からも指摘がされました桑都ペイについて新年度も引き続き継続することは反対です。私どもは以前から、自治体が発行するデジタル地域通貨は民間との競争は避けられず多くの税金を支出することから問題であると指摘をしてきました。桑都ペイの活用にこだわるあまりに他の自治体における類似事業と比較して、多額の事務経費がかかっているという問題も指摘したばかりですが、市長は代表質疑の中で、今後も各事業におけるインセンティブとして桑都ペイを活用すると答弁しました。桑都ペイの最大の問題は、桑都ペイを活用するたびに、桑都ペイを利用する市民とそうでない市民との間にサービスを享受できる・できないという差別、選別をもたらすことにあります。こうした差別をもたらす制度設計を自治体が進めることは公平性をもって事業を遂行すべき自治体としてあるべき姿ではなく、同時に非効率的な事務経費も要する桑都ペイ事業はやめるべきです。
以上で、2025年度予算に対する反対討論を終わります。
【録画中継】令和7年第1回定例会 3月27日 本会議 討論・採決
※ 望月しょうへい議員の反対討論は冒頭です。