2025年第3回定例会本会議|2024年度決算に対する意見|2025年10月6日 市川かつひろ

それでは、日本共産党八王子市議会議員団を代表して2024年度決算に対する意見を述べます。

はじめに、昨年度はすべての学校体育館に空調機設置にむけた予算の実現をはじめ、学校給食センター寺田の整備工事が完了し、すべての中学生への温かい給食提供とともに、学校給食無償化が実現しました。これは、児童生徒、保護者をはじめ地域の長年の願いでありました。私自身、市民とともに実現のために運動してきた議員として、喜びも強いものがあります。行政としても、住民全体の福祉の増進や暮らしやすいまちづくりに向けてこの方向をさらに推し進めることを強く期待するものです。

その一方で、2024年度の市民生活に対する認識について、国や市と、私どもとの間に大きな乖離があります。

政府の景気認識である2024年12月の月例経済報告における基調判断は「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」としています。総じて政府発表の各指標をみると、景気がよくなっているかのように見えますが、民間調査や国民の生活実感からは、かけ離れているものです。

東京商工 リサーチの調査では、全国の企業での倒産件数は2022年から2024年までの11四半期連続で前年を上回っており、2024年は前年比15.1%増となる1万6件で、サービス業を中心に11年ぶりに1万件を超える状況となっています。

さらに、帝国データバンクによる全国企業「休廃業・解散」動向調査では2024年に休業・廃業、解散を行った企業は 6 万 9019件であり、年間件数としては前年に比べて 9914 件・16.8%の大幅増となりました。このように、「回復」どころか企業経営の危機が常態化しています。

企業活動だけでなく、長期にわたる物価高騰が市民生活を直撃しています。

2024年日本銀行情報サービス局の「生活意識調査」における、物価に対する実感では、 「かなり上がった」との回答が69.2%であるのに対し、1年後の景況感について「変わらない」「悪くなる」との回答が93.8%にのぼりっています。

2024年度の全国消費者物価指数は、前年比で2.7%上昇し、3年連続の上昇となる一方で実質賃金は前年比で0.2%減少しており、生活の実感としては苦しさが増しているのが現状です。

また企業が生み出した付加価値のうち、人件費として労働者に分配された割合を示す2024年度の労働分配率は1973年度以来51年ぶりの低水準となり、政府がいう「成長と分配の好循環」を実感するどころではありません。

社会保障の分野では、低所得者ほど生活が圧迫されています。また、現役世代と高齢期世代との間で差別と分断を図るとともに、応能負担の原則はゆがめられています。消費税や国保税などを通じた負担増が市民生活を直撃し、全世代型社会保障改革の名のもとで、給付抑制と自己負担増による社会保障費削減がすすめられているのが現状です。

このような状況の中で、会派代表質疑で示された、市民生活の実態把握を市政世論調査における「市民のくらしの変化」や「定住意向」を根拠に、市民生活の水準は安定しているとの市長の認識は、先に申し上げた市民生活の実態とかけ離れています。市民が直面している、生活困窮や物価高による家計のひっ迫を真正面から捉え、市民生活の実態に基づく政策の実行が求められます。

続いて、2024年度の事業執行ならびに、物価高騰下における市民生活に対する施策について意見を申し上げたいと思います。

決算審議の中で、市政運営における監査ならびに内部統制が機能していなかったことによって市民の信頼を大きく損なう重大な事案が様々な点で明らかとなりました。

まず、市職員97名による通勤手当の不正受給が9月19日付の新聞報道によって明らかにされました。昨年12月には、通勤手当の返納を受けていたにもかかわらず、報道後まで市民や議会に説明がなかったことは深刻な事態です。また本事案について監査委員に対する報告や記載がないことも重大です。本決算審議における市の説明を聞いてもなお説明責任を果たしているとは言えません。事実の解明とともに情報公開を行い、再発防止にむけた内部統制の強化と迅速かつ全面的な説明を求めるものです。

また、あらかじめ定めのない項間で不適切な予算流用が行われていたことも明らかとなりました。これらの事案は、行政に対する市民の信頼をゆるがす問題であり、再発防止と市民の信頼回復に努めていただきたいと思います。

2021年7月から3年余りにわたる市内介護事業所の不正請求等事件に対し、市は当該事業所に実施検査を実施していますが、不正事案の早期発見には至りませんでした。悪意のある不正行為は市民の安心安全を特に脅かすものであり、監査機能の強化を強く求めます。

昨年の総選挙時に市の公共施設に無断で選挙看板が設置される事案が発生しました。選挙管理委員会は、この事案が公職選挙法に抵触する疑いがあるとの認識を示す一方、この件に関する対応や経緯に関する文書を一切残していないことが総務企画分科会質疑のなかで明らかになりました。民主主義の根幹である選挙の公平性が揺らぐ重大な問題です。速やかに再発防止策を講じ、公文書作成および管理の再点検と、選挙事務の透明性確保を強く求めるものです。

次に、物価高騰における市民生活に対する施策についてです。

昨年度、国保税は前年度比で平均8.6%、同じく介護保険料は平均4.2%の引き上げが行われました。

国民健康保険は社会保障制度であり国民皆保険の土台であります。しかし、本市は法定外繰り入れ解消を位置づけ税率改定を行った結果、2024年度は、法定外繰入金は本決算で、初めてゼロ円とし、本市の国保税は、多摩26市で所得割、均等割とも最も負担額が高い自治体となる7年連続の値上げを実施しました。国保加入者の負担軽減よりも繰り入れ解消を優先させる市の姿勢は、物価高騰における市民生活の状況を鑑みたものではなく、認められません。

この間、戸吹ゆったり館や北野あったかホールの入浴施設が廃止され、昨年度は、南大沢および東浅川保健福祉センター内の同施設が相次いで廃止され、利用する市民の交流や憩いの場が失われています。あわせて昨年度は公衆浴場の利用を進めるプレミアム入浴券の発行が終了しました。入浴施設は地域における健康づくりの拠点として、プレミアム入浴券は高齢者福祉施策の一環としてその役割をそれぞれ果たしてきました。近隣の代替施設や他の事業で補うとしても、実際には地域住民の実情や利便性に即したサービスの再配置はなされておらず行政サービスの縮小にほかなりません。

心身障害者福祉タクシー・自動車ガソリン費助成事業の対象に所得制限が設けられたことにより、決算額ならびに総交付者数の減少が明らかになりました。「障害がある人も、ない人も、共に生きる社会をつくる」という理念ならびに、障害者福祉の原点である、「個人の尊厳」「制度の倫理性」「社会的包摂」に反する措置です。市民生活の実態を踏まえたものでなく、財政効率を優先した所得制限は認められません。

また、物価高騰にともなう生活困窮者が増加するもとで、フードバンク団体への運営補助金や食料購入費補助金がそれぞれ皆減されました。行政が本来担うべき役割の一部を補ってきた団体の活動を縮小させるものであり、実質的に中間セーフティネットとして頼ってきた困窮する市民にとっても深刻な事態につながることからも問題です。支援を再開すべきです。

デジタル地域通貨「桑都ペイ」事業は、かねてより過大な委託費に対する事業効果が乏しいこと、また民間サービスとの競合の中でとても持続可能な事業ではないことを指摘してきました。本決算審議でもそのことは明らかであり、市民に直接還元されるポイント原資は事業費のわずか5%にすぎません。事業効果として市は、「地域経済の活性化」「地域コミュニティの効果」を謡いますが、効果を裏付ける検証が示されておらず、多くの市民の公益性から鑑みて有効な事業とは言えません。早期にやめるべきです。

市内の大規模盛土造成地の安全性を確認するにあたり、市は東京都の計画に基づく調査の必要性を判断するため委託調査をかけたものの、調査は調査対象の1割にも満たず、調査内容の精査も不明であったことが、都市環境分科会質疑で明らかになりました。委託調査の目的が不明確であり、調査ありきの委託は効果・効率的な事業とは言えず問題です。

以上で、日本共産党八王子市議会議員団の意見といたします。


【決算に対する各会派・議員の態度】

※1)敬称略
※2)美濃部弥生議員は議長のため採決に加わらず、村松徹議員は欠席

○賛成29名

(自民党)長谷川順子、内田由香利、立川寛之、西室真希、岸田功典、小林秀司、川村奈緒美、吉本孝良、福安徹、岩田祐樹、鈴木レオ

(公明党)古里幸太郎、森重博正、日下部広志、冨永純子、渡口禎、中島正寿、久保井博美、五間浩

(立憲民主)浜野正太、九鬼ともみ、森喜彦、安藤修三、小林裕恵

(諸派)舩木翔平、高橋剛、山本貴士、及川賢一、星野直美

✕反対7名

(共産党)綿林夕夏、望月翔平、市川克宏、石井宏和、鈴木勇次

(諸派)玉正さやか、金子アキコ