2025年第1回定例会本会議|再審法(刑事訴訟法の再審に関する規定)改正を求める意見書|2025年3月27日 石井ひろかず

 

それでは、ただ今上程されました議員提出議案第7号、再審法(刑事訴訟法の再審に関する規定)改正を求める意見書について、提案者を代表して、提案の説明をいたします。

無実の方が、強引な捜査や取り調べで自白を強いられるなどして有罪判決を受け、死刑や無期懲役等まで宣告される冤罪事件が、わが国では後を絶ちません。無実の訴えを続けて、再審で無罪を勝ち取った例も、免田事件、足利事件、東電OL殺人事件、布川事件など多数ありますが、それぞれ無罪放免されるまで長い年月を不当に奪われています。また、再審請求が認められない場合もそれ以上に多く、再審は「開かずの扉」とも評されてきました。

昨年は、1966年の一家4人強盗殺害・放火事件の容疑で過酷な取り調べを受け1980年に死刑判決が確定した袴田巌さんが、逮捕から58年後、初めの再審請求から43年後についに無罪を勝ち取る大きなニュースがありました。第1次再審請求は棄却され、第2次請求で再審が開始された上でのことです。袴田巌さんは、30歳で逮捕され、48年間も収監されていました。拘禁反応や糖尿病などの大病を患って、再審開始決定後に死刑執行の停止と保釈が認められていましたが、死刑囚として長すぎる獄中生活を送ったことによる妄想などの障害はまだ癒えていないようです。プロボクサーとしても活躍していた袴田さんの人生は、逮捕後のあまりに長い間、冤罪によって奪われたことになります。

2018年まで本市にあった医療刑務所では、帝銀事件、名張毒ぶどう酒事件で死刑判決を受けた死刑囚がそれぞれ再審請求中に亡くなっています。それぞれ遺族に引き継がれて、帝銀事件は第20次、名張毒ぶどう酒事件は第10次まで、弁護側から数々の新証拠が上げられ再審請求が行われてきましたが、再審開始決定後の取り消しを含めて、これまではすべて棄却されています。

名張毒ぶどう酒事件は、死刑囚のまま亡くなった奥西勝さんの遺志を引き継いで、妹の岡美代子さんが再審請求を行っています。この事件とその後の再審請求をめぐっては、これまでに何本も映画やテレビ番組がつくられ放映されています。最新の状況など描いた映画「いもうとの時間」は、今年公開され、私も感銘深く観てきましたが、一審では無罪だった判決が、関係者の供述が不自然に変えられて高裁で有罪になったことや、一度は再審開始が決定されたのに検察側からの申し立てで中止されてしまったこと、有力な新証拠があっても簡単に再審請求を棄却してしまう裁判所の姿勢が特に問題だと感じました。

現行の再審法は審理の手続きが明確ではなく、裁判官によって時間が空費されたり、進行協議や事実調べもないまま棄却されたりする「再審格差」があり、再審開始決定後に、検察官の不服申立てによって公判が中止される例もあります。

そこで、再審請求に対して迅速に対応することなど、審理の手続きを明確に整備し、再審開始決定後は、これに対する検察官の不服申し立てを禁じて、再審公判が遅らせられたり取り消されたりすることのないようにすること、また、再審の際には、すべての証拠を開示する手続きを制度化することを、本意見書で求めるものです。

検察側は被告に有利な証拠を持っていても、それを提出しないで、有罪にし、再審も拒もうとすることがあります。それこそが冤罪の温床であり、全ての証拠を包み隠さず提示しなければ、真実にはたどりつけません。

今月6日、1986年の福井女子中学生殺人事件の容疑で懲役刑に処せられていた前川彰司さんの再審公判が名古屋高等裁判所金沢支部で開かれました。1審では無罪の判決でしたが、知人の供述を主な根拠として2審で懲役7年の判決を受け、1997年に最高裁で有罪が確定して実際に服役した後に、2度再審請求が行われて、昨年10月に再審開始決定が確定してのことです。

再審にあたって、裁判所の求めで、捜査報告書など287点の証拠を検察が新たに開示しました。そこで、当初取り調べをした警察官が、最初に有罪につながる証言をした知人について、「見え透いたうそを述べている」などと疑問を持っていたことや、他の証言者が事件当日に見たというテレビ番組の内容が違っていたことなどが明らかになっています。 

再審公判で、弁護団は、「この事件は、警察官らが誘導に乗りやすい関係者に対し不当な誘導を行い、事実に反する誤った証言で前川さんを無実の罪に陥れた冤罪事件だ」と述べ、無罪を主張しました。前川さん自身も意見陳述を行い、「私は決して犯人ではありません。この事件は冤罪であり、私はここに無実であることを主張し、無罪を求めるものです。長い年月をこの事件のために犠牲にしました」と訴えられたとのことです。

この再審公判の判決は、7月に言い渡されます。前川さんが逮捕されてから、38年が過ぎました。冤罪が晴らされることを願います。

本意見書と概ね同様の主旨で再審法の改正を求める意見書は、これまでに全国530以上の地方議会で上げられています。また、昨年3月に立ち上げられた超党派の「冤罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」は、各党の党首クラスを始め、国会議員の過半数の370名以上が加盟し、今国会での改正を目指して作業を進めています。

そこで、本市議会としても、冤罪を晴らしたいと願う方の再審請求に速やかに応え、すべての証拠を開示した上で公正な審理を行うよう、国会の動きも後押しして、再審法を改正することを求めるものです。

議員の皆さまのご賛同を心よりお願いいたします。

 

【録画中継】令和7年第1回定例会 3月27日 本会議 議員提出議案第10号 再審法(刑事訴訟法の再審に関する規定)改正を求める意見書