2024年第4回定例会本会議|令和6年度補正予算等に対する会派代表質疑|2024年12月5日 望月しょうへい

 

ただいま上程されております各議案につきまして、日本共産党八王子市議会議員団を代表して質疑を行います。

1,【第131号議案】 八王子市こども家庭センター条例設定について

はじめに第131号議案、八王子市子ども家庭センター条例設定についてです。国において2022年に児童福祉法の改正が行われ、市区町村に対しては、児童福祉を担当する子ども家庭総合支援拠点と母子保健を担当する子育て世代包括支援センターそれぞれの設立の意義や機能は維持した上で組織を見直し、全ての妊産婦、子育て世帯、こどもへ一体的に相談支援を行う機能を有する機関、つまり子ども家庭センターの設置が努力義務となりました。これに伴い、本市では児童福祉を担当する子ども家庭支援センターと母子保健を担当する保健福祉センターの機能を統合し、統括業務を担う子ども家庭総合センターのほか、保健福祉センターの圏域と合わせ母子保健や児童福祉の包括的な支援事業を担う大横、東浅川、南大沢に各地域センターを設置するとしています。

児童福祉法改正の背景には、児童相談所における虐待相談対応件数が増加していることや虐待による死亡事例など深刻な状況が後を絶たない状況にあることが挙げられます。本市においても2016年の虐待通告件数が625件だったのに対し、昨年度は1373件と年々通告件数が増加している状況です。また、子ども家庭庁の資料によれば子育てを行っている母親のうち約6割が近所に子どもを預かってくれる人がいないなど孤立した状況になっています。子どもの権利を擁護し、子育て家庭全体への支援を強化することなど民間を含む関係機関との連携をはじめとして行政全体で取組を抜本的に強化していくことが求められています。一方で、児童虐待に対する取り組みの現状は保健福祉センターが妊産婦の心身のケアや保護者支援、発育発達支援を通じて顕在化している問題に対する支援を実施し、子ども家庭支援センターが通告に基づいて虐待対応を実施しています。どちらも特定妊婦や要支援児童等を支援しているものの、別組織であるため連携や協働に課題が生じていることからそれぞれの組織を一体的に運営し、虐待への予防的な対応をはじめ妊娠期からの切れ目ない支援といった相談支援体制の強化を図るとしています。

そこで伺います。

【質問1】 これまでの母子保健、児童福祉における取組の評価と課題を踏まえた関係機関との連携体制についてどのように進めていくのか市の考えを伺います。

新たに設置される子ども家庭センターには、従来の業務に加え子育て家庭への支援として子育て世帯訪問支援事業など新設される各事業や子育て短期支援事業の拡充といった動きに対応して効果的に機能強化、連携が求められるなど新たなニーズにこたえる体制も必要です。その体制の根幹は人員体制だと考えています。事前に子ども家庭支援センターと保健福祉センターの各人員の推移を出していただきました。地域の子ども家庭支援センターについては2021年度に34名だった人員が今年度40名、保健福祉センターについては成人事業等も含めての人数ですが、正規39名から41名、会計年度専門職は13名から15名とそれぞれ数名ずつ人員は増えています。そこで伺います。

【質問2】 新たに設置される子ども家庭センターの人員体制は各センターが再編されても、適正な人材確保と育成を進めることが必要です。これが増え続ける相談や虐待に対応し、困難を抱える親子に支援を続け、今後も新たに発生するニーズに対応するといったセンターに期待される役割をきちんと果たすための大きな要素となると考えます。再編・新設される子ども家庭センターについて人員は縮小されず、適正な人員が確保されているのか副市長の見解を伺います。

市長に伺います。

児童福祉法の改正の背景にもあるように、これまでの虐待対応中心から川上である虐待予防対策を強化するとともに子育て家庭への支援強化の司令塔として新設される子ども家庭センターの役割は重要であると考えます。また国会での議論では、子ども食堂などのボランティア的活動をバックアップするといった子どもが地域とつながり、地域の大人との関係性を築く事業も子ども家庭センターの業務として実施するといった内容が2022年当時の厚労省の局長から答弁されています。今後も多様化・複雑化するニーズにこたえるため子ども家庭センターが果たすべき虐待予防や妊娠期からの切れ目ない支援に向けた機能強化の方向性について市長の考えをお聞きします。【質問3】

【質問4】合わせて、これまでの子ども家庭総合支援拠点については人口規模や児童虐待相談件数に応じて、必要となる専門職員の配置人数を設定しています。今後自治体間でも専門職の確保競争がますます激しくなることが予想されます。そうした中で、子ども家庭センターが果たさなければならない役割を確実に果たしていくため、今後の相談対応件数についての動向やサポートプラン作成など法改正に伴う職員の業務負担の増加について実情を十分に把握し、必要に応じて国などへ人員確保や育成をはじめとした支援強化を働きかけていただきたいと思いますが、この点についての市長の考えを伺います。

2,【第136号議案】土地の信託の変更について

次に第136号議案、土地の信託の変更についてうかがいます。

まず土地信託制度は、土地の所有者が信託銀行に土地を預けて、建物の建設や資金調達、管理等を任せ、地代の代わりに収益の一部を信託配当として所有者に還元する制度となっています。またこれまでの経過ですが、1986年に地方自治法が改定され、自治体が所有する土地も信託銀行へ信託することができるようになりました。多摩ニュータウンにおける公共施設の整備は当初、東京都の立て替え施行で行う予定であったにもかかわらず、東京都が行わなかったため土地信託方式が採用されました。これによって、今回議案となっている南大沢地区の市有地は1992年から現在のみずほ信託銀行に信託し、再来年の2026年に土地信託期間が満了する予定となっています。今回の議案は、満了予定となっている土地信託期間をさらに5年延長し2031年まで変更するものです。土地信託を開始する時点での議論や信託後にも様々私たち会派として計画の実現可能性や実情との乖離、地方公共団体が土地信託を行う問題点について様々指摘を行ってきました。

当初の計画と比較して大きく乖離しているのが、配当金です。1992年当時、市長による土地信託についての提案説明においても、「土地の最も有効な利用方法の検討を行った結果、初期投資額が少なく長期間安定した配当が受けられる土地信託制度を導入する」と説明しています。このことからも駅にも近い広大な市の土地を信託銀行に信託する大きなメリットとして配当金を根拠としていたことがわかります。そして市はこの配当金について、30年累計で約151億円の配当を受けられると説明をしてきました。しかし実績は見込み含めて計画の1.3%程度、約2億円となっており、大きく乖離しています。一方で信託会社の報酬である信託報酬額は、見込み含めて30年で約8.4億円となっています。それに加え、契約締結から信託建物竣工日までの企画立案等に対する信託報酬が2.3億円支払われ、借入金総額167億円に対する利息収入はみずほ信託銀行と日本政策投資銀行2行あわせて約74億円であり、みずほ信託銀行分だけでも約41億円になります。つまり、みずほ信託銀行は計画より少なくなっていても50億円を超える収入を得ている一方で、市の収入は約2億円です。また土地信託を行う当初から、議会でもたびたび問題となっていたように当時の市長が「30年後は神のみぞ知る」と発言し、当時の与党議員からもばくちだという発言が出ていたそうですが、信託する当初から契約の信頼性が疑われていました。

そこで伺います。

【質問1】 30年の土地信託期間について、当初から懸念されていたように配当金額が約148億円減と乖離しています。この結果についてどう認識しているのか伺います。

また当時の議論において土地信託のリスクとして挙げられていた債務負担について、フレスコ南大沢に係る借入金は2026年までの信託期間内で完済予定とのことです。しかし市に入る信託配当は信託利益金から修繕積立金、その他運転資金だけでなく、この借入金の返済額も控除した額が配当されるために信託開始後から12年間は市に入る配当金はありませんでした。一方で、信託会社に支払われる信託報酬額は、賃貸料収入に現在は報酬率2.16%を乗じて得られる仕組みになっており、市に配当金が入らなかった期間も含め信託報酬は着実に信託銀行側に入り、信託報酬の総額は冒頭述べたように30年で約8.4億円です。しかしもととなる賃貸料収入について、30年総額約371億円のうち市からの支出は収入全体の7割を超える約267億円です。また昨年度実績によると、オフィス棟の賃貸料平均単価が1平米あたり2202円に対し、公共棟は4000円となっており、オフィス棟と比較してほぼ倍の違いがあります。こうした状況からも市が賃料の大半を出すことで信託銀行に対する収入は下支えして確保しつつ、市に入る配当金はほとんどないという状況は信託銀行だけが安定して儲かっているだけにみえますが、これまでの信託期間をどう評価しているのか伺います。【質問2】

今後、市は信託報酬率を2.16%から5.97%まで引き上げたうえで、5年間の土地信託期間を延長するとしています。また新たな信託報酬率の下で信託銀行が得る信託報酬はこれまでの賃貸料収入の実績から試算して今後5年で約3.5億円を見込んでいるとのことです。しかし市に入る配当金がどれくらいになるのかについては時々の運営状況によるため計画自体がないと聞いていますが、契約において配当に関する規定はどのようになっているのか伺います。【質問3】

土地信託事業そのものの考え方についてですが、1986年5月30日付、当時の自治省事務次官通知では、信託の設定に当たっての留意点として、普通地方公共団体の公用・公共用施設の建設等は、本来、普通地方公共団体の責任と負担において行われるべきものであることに鑑み、これを主たる目的とする信託は行わないこととすること。と書かれています。その後、PFI法の制定や指定管理者制度の導入など公用・公共用施設の建設や管理手法について様々な変化はありますが、土地信託制度についての基本的な考え方であることは国も触れています。そこで伺います。

【質問4】先ほど紹介したように、信託配当について市が当初見込んでいた約151億円の配当は、30年間賃料が上がり続けるといった今では考えられない想定で見込んだ結果であり、現実は約2億円にとどまっています。そもそも住民福祉に貢献するための地方公共団体が遊休地でもない市の財産を銀行など民間の利益になるよう信託していること自体に問題があるとも感じています。国自身も土地信託制度の運用について基本と認めている「公共施設の建設等は本来自治体の責任と負担で行われるもの」とする原則論に立ち、市の財産として当該施設は直営で管理すべきと考えますが市長の認識を伺います。

【質問5】また繰り返しになりますが、今後の契約内容について信託銀行に対する報酬率を引き上げたうえで収益を確保する契約になっていますが、市に対する配当は実績値に基づくとして計画すら示されていません。信託銀行に入る信託報酬は5年で約3.5億円と見込みつつ市に入る信託配当は実績値のため見込みすら示されないというのは、土地信託制度の在り方からして考えられないと思いますが、市長のご見解を伺います。

最後に今後の見通しについてです。

【質問6】土地信託事業自体が縮小している中で、仮に今回継続しても将来的に、早ければ5年後の見通しは極めて不透明です。直営以外の方法として、売却する、土地信託を継続するといった想定される選択肢があります。今後どのような選択を行うかによっては、現在フレスコ南大沢が果たしている南大沢事務所をはじめとした公共的な機能の維持が、賃貸料の増加や他の自治体でも実際に起きているように信託制度の失敗によって土地そのものを売却して失うなど結果として市民の不利益につながることを懸念しています。今後の方向性についてどのように検討を進めていく考えか市長に伺います。

以上で、代表質疑を終わります。

 

=== 市側の回答 ===

1.【第131号議案】八王子市こども家庭センター条例設定について

【答弁1】 子ども家庭部長

関係機関との連携体制について、どのように進めていくのかとのご質間ですが、

現在、母子保健と児童福祉分野が連携し安心して妊娠・出産・子育てができるよう切れ目ない支援に取組んでおりますが、未だ児童虐待においては増加傾向にあります。

そのためこども家庭センターでは予防的支援の強化を図るため、関係機関との連携強化や新たな社会資源の開拓、企画調整を担う総合センターと地域のネットワークを活用し子どもと家庭の支援を行う3か所の地域センターが両輪で、児童虐待への予防的支援に取り組んでまいります。

【答弁2】 副市長

新設するこども家庭センターの適正な人員体制の確保についてのご質問ですが、

人員体制については、これまでも母子保健や児童福祉に対し適切に対応できるよう必要な人員確保を行ってきております。

子どもの健全な育成や虐待に至る前の予防的支援の強化を図れるよう、引き続き適正な体制整備に努めてまいります。

【答弁3】 市長

こども家庭センターの機能強化を図っていくのか今後の方向性についてのご質問ですが、

全ての妊産婦及び子育て世帯と子どもに対し地域での支援が切れ目なく包括的に支援ができるよう、地域の関係機関等の協力を得ながら保健・医療・福祉・教育との連携強化に取組んでまいります。

【答弁4】 市長

支援強化について働きかけについてのご質問ですが、

これまでも児童相談体制の強化に向けた支援については、東京都市長会等を通じて専門人材の確保や人材育成、経済的支援について要望を行ってまいりました。引き続き国や東京都へ働きかけてまいります。

2.第136号議案、土地の信託の変更について

【答弁1】契約資産部長

平成4年の当初計画策定以後、社会経済状況は大きく変化しており、計画どおりにはなっていない部分がありますが、現在まで土地信託事業における収益と費用の差は黒字となっているため、土地信託事業は安定的に運用されているものと認識しております。

【答弁 2】(契約資産部長)

フレスコ南大沢は、市民部事務所や市民センターのほかオフィスとは異なる文化ホールや図書館、保健福祉センターなど多くの公共施設を含んだ施設であり、八王子市は賃借人として毎年度公共施設に 係る賃料及び共益費を一定額支出しております。30年間の信託期間では、賃料及び共益費としての 支出を約 330 億円、固定資産税等と信託配当金を合わせた収入を約 39 億円と見込んでおります。 これらを八王子市が単独で事業を実施した場合の試算額 400 億円と比較すると、財政負担は軽減されています。経済性はもとより、民間による市民総合センターの早期整備の実現、安定的な施設運営 を捉えると、土地信託事業を導入した当初の目的はおおむね達成できているものと評価しております。

【答弁 3】契約資産部長

土地信託契約書において、「毎年度の信託利益金から修構積立金などの元本への組入額を控除した額を信託配当とする」旨を記しております。

【答弁 4】初宿市長

市民サービスの継続性と経済性の観点から調査・分析を行い、検討を重ねた結果、優位性の高い土地信託の延長を決定したところです。フレスコ南大沢の施設の特性を踏まえ、信託継続が最適な管理運営方法であると認識しております。

【答弁 5】初宿市長

信託配当は、信託事業の利益の一部が配分されるものであり、契約書の規定に則り、毎年度八王子市と受託者との協議により決定するものです。引き続き信託利益に応じた配当金の確保に努めてまいります。

【答弁 6】初宿市長

フレスコ南大沢は、これまでビジネスと文化の拠点としての役割を果たしてきました。 社会情勢の変化と市民の皆様の行政ニーズを的確に捉えるとともに、今後のまちづくりに果たすフレスコ南大沢の役割や資産価値を踏まえ、八王子市にとって最適な手法を検討してまいります。

 

※録画中継 | 八王子市議会インターネット映像中