「男女共同参画推進条例」案に対し党市議団
生活者ネットワークと共同で条例案を提出

共産党八王子市議団は八王子市男女共同参画推進条例設定の修正案を生活者ネットワークと共同で提出しました。
この修正案については、市の原案に対する対案であること。
また修正点については男女共同参画推進審議会および苦情処理委員会の所掌事項を明記したうえで、市長の諮問がある場合に限らず委員会が必要と判断した際にも召集できるようにするなど独自性を強化し、実効性を高めるために修正案を提出するものです


議員提出議案第9号提案説明

それでは議員提出議案第9号、八王子市男女共同参画推進条例について、提案者を代表し私から提案説明を行います。

これは市より提出されている第130号議案、八王子市男女共同参画推進条例の対案であります。特に男女共同参画推進審議会ならびに男女共同参画苦情処理委員会についての規定を整理しています。

市は条例案を提出するにあたり、今年4月15日から1か月間、パブリックコメントを実施しました。期間中、330件もの意見が寄せられ市民の条例に対する関心や期待の高さを感じています。

これまでの女性差別撤廃に向けた世界の動きを振り返りますと、1948年に世界人権宣言が出され、人間の自由と尊厳、権利について最も基本的な意義を定めました。1975年には国連が国際女性年として第一回世界女性会議がメキシコシティで開催され、メキシコ宣言が採択されました。この宣言が1979年の女性差別撤廃条約の採択へとつながり、日本では1985年に男女雇用機会均等法の成立や女性差別撤廃条約の批准につながりました。1999年に国が男女共同参画基本法を制定し、第9条では地方公共団体の責務として男女共同参画社会形成促進のための施策を策定、実施する責務を有すると規定しています。本市としても男女共同参画都市宣言を行ってから20年以上が経過しました。しかし2022年7月13日に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数では日本は世界146か国中116位であり、国際的な指標でも日本の女性の社会的地位の低さ、男女の賃金格差の実態、性暴力やパワハラ、セクハラなど女性の人権の脆弱さが表れています。このような実態から一日も早い男女共同参画社会の実現が強く望まれています。こうした市民の要望に応え、男女共同参画施策を着実に推進し、性別による権利侵害から市民等を守るために最も重要なのは実効性のある体制を明確に条例へ位置づけることだと考えています。また条例に規定することは、制定及び改定に議会の審議や議決を要するものとして一貫性や安定性を担保するうえで重要です。規則や逐条解説はあくまで条文の範囲内で規定されるものであり、条文の範囲を超える内容は規定できません。そのため条例において男女共同参画の推進に向けた基本理念や原則、および制度の確立が求められます。

市の条例案を見てみますと、男女共同参画推進審議会は市長の附属機関として、市長の諮問に応じて開催することが規定されています。しかしこの規定では、両機関とも市長の諮問がなければ会議自体が招集されず、機能不全に陥る懸念があります。

そこで私どもの提案では、男女共同参画推進審議会の所掌事項について次の3点を明記しました。一つ目は推進計画の策定及び変更に関すること。二つ目は推進計画の実施状況の評価に関すること。三つ目はそのほかに男女共同参画の促進に関する重要事項に関することです。なお、審議会の開催につきましては市長の諮問を受けた場合だけでなく8名以内の委員のうち3名以上が求めた際には審議会を開催することを追加しました。この追加によって男女共同参画推進審議会委員の発議による男女共同参画の推進に寄与する調査・研究を可能とし、審議会の機能強化を図る内容となっています。

続いて苦情処理委員会についてです。苦情処理委員会には男女共同参画基本法に対する附帯決議にもあるように、苦情処理及び被害者救済の実効性を確保できる体制が求められています。市の条例案では審議会と同様に市長の諮問に応じて苦情申し出について調査審議し、答申するとしています。一方でパブリックコメントを募集する際に市が示した素案では、苦情の処理については第三者的な体制を整備することを想定…としており、本議会に提出された案の内容とは矛盾しています。また苦情処理委員会に苦情が申し出される対象は男女共同参画の推進に影響を及ぼすものと認められる施策に関するものであり、苦情の内容はまさしく市長に対するものでもあります。そのため、行政に対する監視および勧告、提言を行うための機能をもった独立性のある苦情処理体制の確保が必要不可欠と考えます。こうしたことから窓口が市自身であることや苦情処理委員会を開催するための条件に苦情の内容との関係がある市長の諮問に応じてと規定することは権利が侵害されている市民等を守る体制としては不十分です。また、苦情の対象に関して男女共同参画の推進に影響を及ぼすものと認められる施策に限られていることで、市民等が苦情を申し出る際に高いハードルとなってしまう懸念もあります。そのため私どもの提案では、苦情を申し出る窓口は市ではなく苦情処理員会としています。さらに苦情処理委員会の所掌事項と職務についても明記したうえで苦情申し立てがなされた際には苦情処理員会をすみやかに開催し、苦情処理にあたるものと規定しています。また苦情の対象は施策に限らず重大な人権侵害事案なども追加することで苦情の対象を拡大し実効性を高める内容となっています。このように具体的な機能を持った男女共同参画推進審議会や苦情処理委員会を条例に規定することで、これまでの計画である男女が共に生きるまち八王子プランや拠点施設と合わせて男女共同参画を推進するうえで条例が大きな役割を果たすものと考えています。

議員各位の賛同を賜りますようお願い申し上げまして、私からの提案説明といたします。


議員提出議案第9号
八王子市男女共同参画推進条例設定について

上記の議案を別紙のとおり地方自治法第112条及び八王子市議会会議規則第14条の規定により提出します。

令和4年(2022年)11月  日

提出者  八王子市議会議員 木 田   彩
同    鈴 木 勇 次
同    前 田 佳 子
同    望 月 翔 平
賛成者 八王子市議会議員 石井宏和

八王子市市議会議長
吉 本孝  殿

 

八王子市男女共同参画推進条例

我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置づけ制定された男女共同参画社会基本法のもと、ジェンダー平等の実現に向けた国際社会の動向と協調しつつ、様々な取組が進められてきた。
本市においても、平成11年に「男女共同参画都市」を宣言し、「男女が共に生きるまち八王子プラン」に基づき、男女共同参画に関する総合的な取組を進めてきた。
こうした取組等により、男女共同参画は着実に前進しつつある一方で、社会全体においてアンコンシャス・バイアスを含む性別による固定的な役割分担意識に基づく構造的な問題等が依然として根強く残っており、また、性別に起因する権利侵害等、多くの課題が残されている。
若者が集まる学園都市であり、企業が多数集積する本市において、誰もが学びやすく、働きやすく、社会のあらゆる分野に参画できる環境を整えることが重要である。未だに課題が残る男女共同参画を、市、市民、教育関係者、事業者及び地域活動団体が共に手を携えて着実に推進することを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関し、基本理念を定め、市、市民、教育関係者、事業者及び地域活動団体の責務を明らかにするとともに、市の施策の基本となる事項を定めることにより、その施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって様々な場面において、男女が共に参画する社会を実現することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
⑴ 男女共同参画 男女が、社会の対等な構成員としてお互いを尊重し合い、自らの意思によって家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女がその個性及び能力を十分に発揮することができ、等しく政治的、経済的、社会的及び文化的利益を受け、かつ、共に責任を担うことをいう。
⑵ ジェンダー平等 性別に関わらず平等に責任や権利や機会を分かち合い、あらゆるものごとを一緒に決めることをいう。
⑶ アンコンシャス・バイアス 誰もが潜在的に持っている無意識の思い込みのことをいう。
⑷ 性別による固定的な役割分担意識 個人の能力等によって役割を決めることが適当であるにもかかわらず、性別を理由として、役割を分ける考え方のことをいう。
⑸ 市民 市内に居住し、通学し、又は通勤する者をいう。
⑹ 教育関係者 市内において学校、地域その他の社会のあらゆる分野において行われる教育に携わる者をいう。
⑺ 事業者 市内において事業を行う個人又は法人その他の団体をいう。
⑻ 地域活動団体 町会、自治会その他市民を主な構成員として市内において活動を行う団体をいう。
⑼ ドメスティック・バイオレンス 配偶者その他親密な関係にある者(配偶者であった者その他親密な関係にあった者を含む。)からの身体的、精神的、社会的、経済的又は性的な暴力をいう。
⑽ セクシュアル・ハラスメント 性的な言動により当該言動を受けた個人の生活の環境を害すること又は性的な言動を受けた個人の対応により当該個人に不利益を与えることをいう。
(基本理念)
第3条 男女共同参画の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
⑴ 誰もが、個人としての尊厳が重んぜられることにより、性別による差別的取扱いを受けることがなく、その個性及び能力を発揮し、自らの意思により多様な生き方を選択できること。
⑵ 性別による固定的な役割分担意識に基づく制度又は慣行が、社会における活動の自由な選択に対して影響を及ぼすことのないよう配慮されること。
⑶ 男女が、社会の対等な構成員として、市における政策又は教育関係者、事業者及び地域活動団体における方針の立案及び決定の過程に、共同して参画する機会が確保されること。
⑷ 男女が、相互の協力と社会の支援の下に、子育て、介護その他の家庭生活において、また、学校、職場、地域その他の社会生活において対等な立場で参画できること。
⑸ 男女が、互いの性に対する理解を深め、妊娠、出産等の性及び生殖に関する個人の意思を尊重し合い、生涯にわたり安全かつ健康な生活を営むことができるように配慮されること。
⑹ 誰もが、ドメスティック・バイオレンス、セクシュアル・ハラスメントその他の性別に起因する暴力を受けることがなく、個人として尊重されること。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画の推進に関する施策(以下この条から第9条まで、第12条、第17条及び第18条において「施策」という。)を策定し、及び実施する責務を有する。
2 市は、施策を実施するに当たっては、市民、教育関係者、事業者及び地域活動団体(以下「市民等」という。)並びに国及び他の地方公共団体と相互に連携する責務を有する。
(市民の責務)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、男女共同参画について理解を深め、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野において男女共同参画の推進に努めなければならない。
2 市民は、市が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
(教育関係者の責務)
第6条 教育関係者は、男女共同参画の推進において教育が果たす役割が重要であるとの認識の下に、基本理念に配慮した教育を行うよう努めなければならない。
2 教育関係者は、市が実施する施策に協力するよう努めなければならない。(事業者の責務)
第7条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動において、個人の意欲、能力、個性等が尊重され、男女が共に参画することができるよう努めなければならない。
2 事業者は、雇用における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、性別による固定的な役割分担意識に基づく制度又は慣行を見直し、職業生活における活動と家庭生活における活動その他の活動を両立することができる職場環境を整備するよう努めなければならない。
3 事業者は、市が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
(地域活動団体の責務)
第8条 地域活動団体は、基本理念にのっとり、性別による固定的な役割分担意識に基づく制度又は慣行を見直し、男女が共に参画できるよう努めなければならない。
2 地域活動団体は、市が実施する施策に協力するよう努めなければならない。
(情報の収集及び調査)
第9条 市長は、施策を策定し、効果的に実施するため、男女共同参画に関する事項について、情報の収集及び調査研究を行うものとする。
2 市長は、必要があると認めるときは、市民等に対し、男女共同参画に関する事項について報告を求めることができる。
(啓発活動)
第10条 市長は、市民等に対し、男女共同参画についての関心及び理解を深めるために必要な啓発活動を行うものとする。
(活動に対する支援)
第11条 市長は、男女共同参画の推進に関する活動を行う市民等に対し、人材の育成、情報提供その他の必要な支援を行うものとする。
(体制の整備)
第12条 市長は、施策を効果的に実施するため、相談や啓発活動等を行うための拠点の設置や、市民等並びに国及び他の地方公共団体との相互連携等のために必要な体制を整備するものとする。
(男女共同参画推進審議会の設置)
第13条 市長は本条例に基づく男女共同参画施策を推進し、必要な事項を調査審議するため、八王子市男女共同参画推進審議会(以下審議会という)を設置する。
(所掌事項)
第14条 審議会は、次の各号に掲げる事項を所掌し、市長に建議することができる。
(1) 推進計画の策定及び変更に関すること。
(2) 推進計画の実施状況の評価に関すること。
(3) その他男女共同参画の促進に関する重要事項に関すること。
(組織)
第15条 審議会は次に掲げる委員によって組織する。
(1) 審議会委員は8名以内とし、公募による市民委員2名以内、関係市民団体の代表者2名以内、有識者4名以内をもって組織する。また、委員の男女構成については、男女それぞれに偏りがないよう配慮しなければならない。
(2) 審議会は会長1名、副会長1名を置く。
(3) 前号の委員は市長が委嘱する。
(4) 委員の任期は2年とし、補欠委員の任期は前任者の残任期間とする。ただし再任を妨げない。
(運営)
第16条 審議会は第14条の所掌事項に関し市長からの諮問を受けた時、並びに審議会委員3名以上の委員が所掌事項に関し調査・研究事項を特定し審議会の開催を求めた時に開催される。また審議会は公開を原則とする。ただし審議会の適正な運営に支障がある場合は非公開とすることができる。
(推進計画)
第17条 市長は、施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)第14条第3項に規定する市町村男女共同参画計画(以下「推進計画」という。)を策定するものとする。
2 市長は、推進計画を策定するに当たっては、市民等の意見を反映するために必要な措置を講ずるものとする。
3 市長は、推進計画を策定するに当たっては、あらかじめ審議会の意見を聴くものとする。
4 市長は、推進計画を策定したときは、速やかにこれを公表するものとする。
5 前3項の規定は、推進計画の変更について準用する。
(実施状況の公表)
第18条 市長は、毎年度、推進計画に基づく施策の実施状況を公表するものとする。
(性別による権利侵害の禁止)
第19条 何人も、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野において、性別による差別的な取扱い、ドメスティック・バイオレンス、セクシュアル・ハラスメントその他の性別に起因する権利侵害に当たる行為を行ってはならない。
(公衆に表示する情報に関する留意)
第20条 何人も、公衆に表示する情報において、性別による固定的な役割分担意識及び暴力的行為を助長し、又は連想させる表現並びに著しく性的感情を刺激する表現を行わないよう努めなければならない。
(相談申出への対応)
第21条 市長は、性別に起因する権利侵害その他の男女共同参画の推進を妨げる行為について、市民等からの相談の申出を受けるための窓口を設置する。
2 市長は、前項の相談の申出を受けた場合、関係機関と連携し、適切な処理に努めるものとする。
(苦情申し出)
第22条 市民、教育関係者、事業者及び地域活動団体は以下各号に当てはまる事案に対し市に苦情を申し立てることができる。
(1) 市が実施する男女共同参画施策並びに男女共同参画施策に影響を及ぼすと認められた施策、又は事案が発生した時
(2) 市区域内において男女共同参画社会の実現を阻害する事案、重大な人権侵害事案が発生した時
(八王子市男女共同参画苦情処理委員会の設置)
第23条 市長は、前条の申し出を処理するため、八王子市男女共同参画苦情処理委員会(以下苦情処理委員会という)を設置する。
(所掌事項及び職務)
第24条 苦情処理委員会の所掌事項と職務は以下各号に定める通りである。
(1) 第22条の苦情申し立てがなされた時は、速やかに苦情処理委員会を開催し苦情処理に当たる。
(2) 同条(1)に該当する苦情申し出に係る施策を実施する機関に対して、資料の提出及び説明を求め審査し、必要があるときは是正の措置をとるよう市長に勧告又は提言することができる。
(3) 同条(2)に該当する苦情申し出があり、かつ苦情処理委員会が必要を認めた場合は関係者らの協力を得て資料の提出、説明を求めることができる。また、是正されるべき事案と判断した場合は関係者に意見を述べることができる。
(4) 苦情処理委員会は処理の内容を苦情申し出人に通知しなければならない。
(委員)
第25条 苦情処理委員会委員は3名以内とし、市長が男女共同参画に識見のある者を任命する。委員の任期は2年とし、補欠委員は前任者の残任期間とする。ただし再任を妨げない。
委員は職務上知りえた秘密を漏らしてはならない。退任後も同様とする。
(委任)
第2条 この条例の施行について必要な事項は、市規則で定める。
附 則
1 この条例は、令和5年4月1日(以下「施行日」という。)から施行する。
2 施行日前に男女共同参画社会基本法第14条第3項の規定に基づき策定された男女が共に生きるまち八王子プランは、第17条の規定により策定された推進計画とみなす。
3 非常勤の特別職の職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年八王子市条例第29号)の一部を次のように改正する。

提案理由
市の案に対し、男女共同参画推進審議会と男女共同参画苦情処理委員会についての規定を整理し、より男女共同参画推進のために機能する機関としての位置づけを明確にした。所掌事項を明確にし、審議会については、市長の諮問だけでなく、委員の発議により男女共同参画の推進に寄与する調査・研究を可能にし、市長に建議する規定を設けた。苦情処理委員会については、市民等が苦情の申し立てを行う権利があることを明確にし、委員会が申し立てを受け、速やかに処理する職責があることを明確にした。よって実効性ある機能強化を図るものである。